プロローグ②
「お、お、女!?」
「女以外の何に見える」
低く怒りを抑えた様な声で、そんな事を言うがあんな場所に女がいるとは誰も思わないだろう。
「女だから、君のおかげで、せっかくの隙が出来て、格闘しても相手を長時間戦闘不能にする力はなかった」
それを聞いて、さっきの銃声は自分に向けてのものでない事を知る。
「2人は殺したけど、1人には逃げられたから、すぐに敵の応援が来るわ」
「敵?」
呟くと女はスピードを緩めずに振り向いた。殺したと聞いて、警戒心から肩に置いた手が固くなる。
しかし、女の青い瞳を見てそんな状況でも無いのに貴樹はその女の顔を見て息を呑んだ。
「ええ。敵ね。このままでは殺されるだろうな」
その瞳が見る先が自分で無い事に貴樹は気付き、貴樹も振り向いて後ろを見た。
ヘリが建物スレスレで飛んでいるのが見えた。
「私の名前は西条麗菜麗菜で良いよ。君の名前は」
「なんかやばそうなんだけど、どうしてこの状況で自己紹介!?」
明らかに普通では無い低空飛行のヘリを見て貴樹は動揺し、震える声で叫ぶ。
「一緒に死ぬ者の名前を知らないのは寂しくない?」
軽いノリでそんな事を言われ、ヤケクソ気味に貴樹は叫んだ。
「賽中貴樹!! 貴樹って呼んでくれ!! ちくしょう!!」
「貴樹!! 君は泳げる!?」
「泳げるかって!? 人魚並だよ!! も~ダメだ!!」
やけくそで自身も何が言いたいのか分からなくなっていた。しかし、迫りくるヘリを見るのを止めて、進行方向に目を向けると心臓が止まりそうになった。
「ヘリの中の奴らも水中での戦闘なんて想定していないだろうし、この原付でヘリを撒く前に車での応援が来て終り……だったら!!」
「ちょ!! お前マジか!!」
原付と共に空を飛んだ……っと貴樹は思いたかったが、海に沈んだ原付を水中で見ていた。
何だ? 一体なんなんだ? 何がどうなって、原付が海の中に?
自身に起きた事は全く理解出来なかった。
しかし、原付が海の底に沈んだのだけは、悲しく理解出来た。
君子危うきに近寄らずとは、教養があり徳がある者は、自分の行動を慎むものだから、危険なところには近づかないということ。
彼、賽中貴樹は残念ながら近づいてしまった。




