第93話:合唱団を作りますわ!
夕食後、麗奈は居間のテレビをじっと見つめていました。
画面には、制服姿の学生たちが並び、息を合わせて歌う様子が映っています。
最初は何となく眺めていただけでしたが、曲が進むにつれて、麗奈はすっかり聞き入っていました。
最後の音が消え、会場から大きな拍手が起こります。
「……素晴らしいですわ」
「合唱コンクールですね」
隣で見ていた小春が答えました。
麗奈はしばらく画面を見つめたあと、勢いよく立ち上がりました。
「決めましたわ」
「何をですか?」
「よし、決めましたわ! わたくし、合唱団を作りますの!」
「急ですね」
「皆で声を合わせて、一つの音楽を作り上げるのですわ。わたくしもぜひやってみたいですわ!」
麗奈はすでにやる気に満ちています。
「それで、メンバーは?」
「…………」
麗奈は固まりました。
そこまでは考えていなかったようです。
しばらく黙ってから、ゆっくりと小春へ顔を向けました。
「小春。特別に入団を許しますわ」
「頼んでませんけど」
「遠慮しなくてもよろしくてよ」
「遠慮ではありません」
翌日、屋敷へ遊びに来たアリサにも、麗奈はすぐに話を持ちかけました。
「アリサさんも、特別に入団を許しますわ」
「なぜ上からですの?」
「わたくしが団長ですもの」
「では、わたくしは副団長ですわ」
「勝手に役職を増やさないでくださいまし!」
二人が言い合っていると、一緒に来ていたアリサの姉が楽しそうに手を合わせました。
「合唱ですか。素敵ですね。私も参加してよろしいですか?」
「もちろんですわ!」
「お姉様まで参加なさるのですの?」
アリサが目を丸くします。
姉の隣にいた弟も、小さく手を挙げました。
「姉さんが入るなら……僕も入っていいですか?」
「歓迎しますわ!」
こうして、麗奈、小春、アリサ、姉、弟の五人が集まりました。
「これで合唱団らしくなりましたわね」
「五人しかいませんけど」
「最初はこれくらいでよろしいのですの!」
麗奈は満足そうに頷きます。
「伴奏はどうしますの?」
アリサに尋ねられ、麗奈は再び固まりました。
全員の視線が、近くで紅茶を用意していた橘へ向かいます。
「橘」
「はい」
「ピアノは弾けますの?」
「一通りは」
「弾けますの!?」
「以前、習っておりましたので」
麗奈はすぐに橘の前へ立ちました。
「では、伴奏をお願いしますわ!」
「承知しました」
「受け入れるのが早いですね」
小春が呟きました。
麗奈は全員を見回し、胸を張ります。
「団名は、ローゼンコール聖歌隊ですわ!」
「ローゼンコールって、どこですか?」
弟が首を傾げました。
「どこ、とは?」
「地名ではありませんの?」
アリサも尋ねます。
「違いますわ」
「では、何ですの?」
「ローゼンコールの語呂がよかったので決めましたの」
「語呂だけで決めたんですか?」
「そうですわ。語呂で決めて何が悪いのですの?」
麗奈は本気で不思議そうな顔をしていました。
「それより、聖歌隊なのに普通の合唱曲を歌うのですか?」
小春が尋ねます。
「合唱団より、聖歌隊の方が格好よかったのですわ」
「そこも同じ理由ですか?」
「響きがよかったからですの!」
こうして、団員五名、伴奏者一名のローゼンコール聖歌隊が発足しました。
まだ歌う曲は決まっていません。




