第91話:アリサさんが寝坊しますわ!
朝早く、麗奈の端末へアリサから連絡が届きました。
『起きていますの?』
麗奈は驚きました。
『もちろんですわ』
実際には、たったいま通知音で目を覚ましたところでした。
少しして、アリサから通話がかかってきます。
「麗奈さん、どうしましょう」
「何ですの、その声は」
「寝坊しましたわ」
普段の完璧なアリサからは想像できない言葉でした。
「アリサさんが?」
「笑わないでくださいまし!」
麗奈は布団の中で必死に笑いをこらえます。
「すぐ支度なさいな」
「髪がまとまりませんの!」
「わたくしへ相談してどうしますの!」
麗奈は橘へ端末を渡しました。
橘は落ち着いて、短時間で整える方法を説明します。
通話の向こうでアリサが慌ただしく動き、最後に小さく礼を言いました。
その日の夕方、アリサから連絡が届きます。
『間に合いましたわ。今日のことは忘れてくださいまし』
麗奈はすぐに返しました。
『難しいお願いですわね』
数秒後、大量の怒った記号が返ってきました。
麗奈は声を上げて笑いました。
「人の失敗を笑うものではありません」
橘が言いました。
「わたくしも笑われていますもの。お互いさまですわ!」
翌日、アリサは何事もなかったような顔で屋敷へ来ました。
「昨日は大変でしたわね」
「何のことですの?」
「寝坊の――」
「何のことですの?」
声だけが少し低くなりました。
麗奈はそれ以上言わず、代わりに目覚まし時計を一つ差し出しました。
「贈り物ですわ」
「いりませんわ!」




