第9話:晩餐会を開きますわ!
お嬢様といえば、晩餐会。
長いテーブル。
銀の食器。
華やかな料理。
大勢の客人。
問題が一つあります。
わたくしには、招待する相手がいません。
「晩餐会を開きますわ」
わたくしが宣言すると、橘が尋ねました。
「招待客は?」
「これから決めますの」
「ご友人は?」
「……多忙ですわ」
「連絡先は?」
「ネット上に多数おりますの」
「実際に会ったことは?」
「そんなことは重要ではありませんわ!」
相互フォロワーならいます。
ゲーム仲間もいます。
けれども、突然屋敷へ招待する勇気はありません。
断られたら立ち直れませんもの。
「今夜は、身内だけの晩餐会に変更しますわ」
「身内とは?」
「わたくし、橘、小春」
「いつもの夕食ですね」
「正装して食べれば晩餐会ですの!」
小春が台所から顔を出しました。
「今日、カレーですけど」
「銀の食器へ盛りなさい!」
「食べにくいですよ」
「では金の食器!」
「ありません」
「高級そうな皿!」
「昨日、お嬢様が三枚割りました」
「過去を蒸し返さないでくださる!?」
一時間後。
長い食卓の端に、三人分のカレーが並びました。
わたくしは一番奥の大きな椅子へ座ります。
橘と小春は、遠く離れた反対側。
「……遠すぎませんこと?」
「正式な席順です」
「会話ができませんわ」
「声を張ってください」
「優雅ではありませんの!」
結局、二人をわたくしの隣へ移動させました。
「べつに寂しいわけではありませんわ」
「はい」
「料理の感想を聞くためですの」
「はい」
「……本当に分かっていますの?」
小春がカレーを一口食べます。
「おいしいです」
「当然ですわ。わたくしが野菜を切りましたもの」
「全部大きさが違いましたけど」
「それは個性ですの!」
橘が静かに口元を緩めました。
わたくしはそれを見て、少しだけ胸を張りました。
「次回は、百人を招きますわ」
「まず友人を一人作りましょう」
「余計なお世話ですわ!」




