第8話:商人を迎えますわ!
お屋敷には、荷物がよく届きます。
家具。
食器。
ドレス。
役に立たない甲冑。
その日も、玄関の呼び鈴が鳴りました。
「誰ですの?」
『宅配便でーす』
玄関を開けると、制服姿の男性が大きな箱を抱えていました。
「一ノ瀬さん宛てです」
「ご苦労でしたわ。門番へ預けなさい」
「門番?」
「門の守護を担う者ですの」
「さっき、門のところ誰もいませんでしたけど」
そうでしたわ。
門番はいません。
「本日は休暇ですの」
「じゃあ、ここ置きますね」
「待ちなさい」
「はい?」
「お屋敷の荷物を、玄関前へ置いて帰るおつもり?」
「置き配指定ですけど」
「わたくしが?」
「注文時に」
わたくしはスマートフォンを確認しました。
確かに、置き配へチェックが入っています。
おそらく、よく見ずに押しましたの。
「では、玄関ホールまで運びなさいな」
「基本、玄関ドア前までなんです」
「ここが玄関ですわ」
「ですよね」
男性は箱を置き、端末を差し出しました。
「こちらにサインお願いします」
「サインですのね」
お嬢様らしい署名。
優雅な筆記体。
羽根ペンで、さらさらと。
わたくしは指で画面へ名前を書きました。
線がガタガタになりました。
「やり直しますわ」
「そのままで大丈夫ですよ」
「わたくしが大丈夫ではありませんの!」
三回目。
四回目。
五回目。
「次の配達があるので……」
「もう少しだけ待ちなさい!」
「普通に名字だけで大丈夫です」
「普通では、お嬢様らしくありませんわ!」
背後から小春が現れました。
「すみません。この人、ネットでしか人と話さないので」
「余計なことを言わないでくださる!?」
宅配員は笑いをこらえながら帰っていきました。
「恥をかきましたわ……」
「向こうも慣れてますよ」
「この屋敷の名誉に関わりますの!」
「何を買ったんです?」
「玉座ですわ」
「また無駄遣いしたんですか?」
「玉座のどこが無駄ですの!」
箱を開けます。
中から出てきたのは、高さ三十センチほどの椅子でした。
「……小さいですね」
「犬用ですわ」
「お嬢様また説明見なかったんですか?」
「お黙りなさい!」




