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第86話:鏡の前で練習しますわ!

第86話:鏡の前で練習しますわ!

 麗奈は全身鏡の前で、何度も同じ動きを繰り返していました。


 右手を胸元へ添え、軽く頭を下げます。


「ごきげんよう」


「何をしてるんですか?」


 小春が後ろから尋ねました。


「ひゃあっ!! び、びっくりしましたわ」


「すみません。 で、これは一体……」


「正式な場での挨拶を練習していますの」


「いつ正式な場へ行くのですか?」


「いつでも対応できるようにですわ!」


 麗奈はもう一度頭を下げました。


 今度は角度を意識しすぎて、身体が前へ傾きます。


「お辞儀というより、落ちそうですね」


「黙って見ていなさいな!」


 橘が通りかかり、姿勢を直しました。


「背筋を伸ばし、顎を少し引かれるとよろしいかと」


 麗奈が真似すると、先ほどより自然になりました。


「どうですの?」


「よろしいと思います」


「小春は?」


「さっきよりは」


「もっと感動しなさいな!」


 その後、麗奈は笑顔の練習も始めました。


 しかし意識するほど不自然になり、口元だけが引きつります。


「怖いです」


「笑顔ですわ!」


「怒っているように見えます」


「では、どうすれば自然になりますの?」


 小春は少し考えました。


「お菓子でも見ればいいんじゃないですか?」


 橘が焼き菓子を一つ差し出すと、麗奈の表情が一瞬で明るくなりました。


「それです」


「わたくしの笑顔を食欲で管理しないでくださいまし!」


 翌日、アリサが訪ねてきたため、麗奈は練習の成果を見せました。


「ごきげんよう、アリサさん」


 完璧な角度で頭を下げます。


「急にどうしましたの?」


「小春と同じことを言いますわね」


 結局、自然な挨拶が一番でした。

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