第85話:弟さんへ本を貸しますわ!
九条院家の弟が再び遊びに来た日、彼は麗奈の書庫を興味深そうに眺めていました。
「本がお好きですの?」
「はい。でも、姉さまの本は難しくて」
「分かりますわ」
麗奈は迷わず、棚から冒険小説を一冊取り出しました。
「こちらはいかが?」
弟は表紙を見て、目を輝かせます。
「借りてもいいんですか?」
「もちろんですわ。ただし、返却期限は守ってくださいまし」
小春が麗奈を見ました。
「何ですの?」
「人には厳しいんですね」
「本を貸す者として当然ですの!」
数日後、弟から丁寧な手紙とともに本が返ってきました。
『とても面白かったです。続きも読んでみたいです』
麗奈は満足そうに頷きます。
「見る目がありますわね」
「麗奈さんが書いた本ではないですけど」
「選んで薦めたのはわたくしですの!」
麗奈は続巻を箱へ詰め始めました。
「一冊だけではないのですか?」
「面白いところで止めるのは酷ですもの。許せませんわ」
「だからって、それ全部送るんですか?」
「読書を応援するお姉様ですの」
「またお姉さんぶってますね」
「今度は本当に役立っていますわ!」
箱の中には、続巻だけでなく、しおりと菓子まで入れました。
「本だけでよろしいのでは?」
「読書には糖分が必要ですの」
「麗奈さんが好きなだけですよね?」
「弟さんのためですわ!」
翌日、アリサから連絡が来ました。
『弟へ大量の本と菓子を送ったのは麗奈さんですの?』
『感謝なさってもよろしくてよ』
『夜更かししないよう、責任を持ってくださいまし』
麗奈はしばらく考え、『早寝も読書の一部ですわ』と返しました。
自分でも意味は分かっていませんでした。




