第77話:朝から勉強しますわ!
翌朝、麗奈は珍しく早く目を覚ましました。
「今日から、わたくしは変わりますの」
書庫で朝から勉強するためです。
寝間着のまま書庫の扉を開けると、すでに小春がいました。
「おはようございます」
「なぜ小春がいますの?」
「昨日、明日から読むと言っていたので」
机の上には教科書とノートが並んでいます。
「逃げ道を塞ぎましたわね?」
「応援しているんです」
麗奈は椅子へ座り、教科書を開きました。
五分後。
「お嬢様?」
「考えていますの」
十分後。
麗奈の頭が少しずつ下がっていきました。
「寝てません?」
「目を閉じて集中していますの」
ついには教科書を枕にして動かなくなりました。
小春が毛布を持ってくると、橘が書庫へ入ってきます。
「勉強はどうされました?」
「始めて十五分で終わりました」
「そうですか」
二人が小声で話していると、麗奈が突然顔を上げました。
「聞こえていますわよ!」
「起きてたんですか?」
「途中からですの!」
麗奈は毛布を肩へかけ、教科書を開き直しました。
「いまから本気を出しますわ」
一時間後、麗奈は三ページ進んでいました。
「進みましたわ!」
「遅いですけど、進みましたね」
「褒めるなら素直に褒めなさいな!」
麗奈はさらに続けようとしましたが、今度は空腹で集中できなくなりました。
「朝食はまだですの?」
「勉強前に軽く食べるか聞きましたよね?」
「そのときは知性で満たされる予定でしたの!」
「満たされませんでしたね」
橘が小さなサンドイッチを持ってきました。
「食べながら続けられてはいかがでしょう」
「さすが橘ですわ!」
麗奈は一口食べると、急に機嫌を直しました。
「これなら十ページはいけますの」
「食べ終わったら?」
「休憩しますわ」
「もう休憩の予定を立ててるんですか?」
結局、その日の午前中に進んだのは七ページでした。
それでも麗奈は、しおりを挟みながら満足そうに頷きました。
「昨日より七ページも賢くなりましたわ」
「ページ数と賢さは同じではありません」
橘の指摘は聞かなかったことにしました。




