第61話:温泉を調べますわ!
庭の奥から湧き出した温かい水。
専門の方へ調査を依頼した結果が届きました。
「温泉ですの!?」
「温泉法上の基準を満たしているそうです」
橘が報告書を読み上げます。
温度。
成分。
湧出量。
難しい数字が並んでいましたが、大切なのは温泉だということです。
「露天風呂を造りますわ!」
「維持管理や許可の確認が必要です」
「では、すぐに進めなさい!」
「まず用途を決める必要がございます」
小春が報告書を覗き込みます。
「お屋敷で使うだけなら、小さなお風呂でもいいんじゃないですか?」
「小さくては温泉らしくありませんの!」
「大きくして誰が入るんです?」
「わたくしたちですわ!」
「三人と、ときどきアリサさんですよ」
「ノアも入りますの!」
「犬を入れるなら別にしてください」
話し合いの末、離れの裏へ小さな浴室を造る案が出ました。
屋外ではなく、周囲から見えないよう壁と屋根を設ける。
庭を眺められる大きな窓。
温泉を引くための設備。
「立派なものにしますわ!」
「予算に限りはあります」
「払えますの!」
「払えるかどうかではなく、必要かどうかです」
橘は冷静です。
わたくしは設計図を覗き込みました。
「この浴槽、少し小さくありませんこと?」
「四人は入れます」
「では十分ですわね」
「珍しく引きましたね」
小春が申します。
「大きければよいというものではありませんの」
「成長しましたね」
「そのように子ども扱いしないでくださる?」
完成は少し先です。
けれど、あのお化けの噂が本当に温泉だったとは。
「麗奈さん」
アリサさんが報告書を見ながら申しました。
「本当にお湯が出ましたわね」
「ええ」
「最初に言ったことを、今度は覚えていますの?」
「覚えていますわ!」
さすがに、同じことを二度も忘れませんの。
たぶん。




