第60話:別邸を整えますわ!
先日見つけた離れを、使えるように整えることになりました。
「ここを、わたくし専用の別邸にしますわ!」
離れの中央で宣言すると、小春が埃を払いながら振り返りました。
「休憩室にしたいです」
「わたくし専用ですの!」
「私たちが片づけるんですけど」
「もちろん、使用人も入ることは許しますわ」
「それは専用とは言いませんけどね」
橘は古い書棚を確認しています。
「来客用の談話室として整えるのが実用的かと」
「わたくしの別邸ですの!」
「麗奈さん」
いつの間にか、当然のように来ていたアリサさんが、窓辺へ立っています。
「こちらでお茶会を開きたいですわ」
「どうして皆さん、勝手に用途を決めていますの!?」
ノアはすでに暖炉の前へ伏せていました。
シロは窓際の椅子へ飛び乗っています。
「あなた方まで!」
「にゃあ」
「わん」
結局、全員で片づけることになりました。
古い布を外し、床を掃き、窓を拭きます。
書棚には使えそうな本が残っていました。
小さな台所もあります。
「思ったより、状態がよいですわね」
「長く使われていなかっただけのようです」
橘が答えました。
午後には、椅子とテーブルを運び込みました。
小春は休憩用の棚。
アリサさんは茶器。
橘は来客用の記録簿。
わたくしは、自分専用の大きな椅子を中央へ置きました。
「これで完成ですわ!」
「皆で使う場所になりましたね」
「皆で使える、わたくし専用の別邸ですの!」
「矛盾していますわ」
アリサさんが申しました。
「細かいことはよろしいでしょう!」
お茶を淹れ、全員で新しい部屋を眺めます。
本邸より静かで、庭も近い。
ノアは暖炉の前。
シロは窓辺。
小春と橘も、少しだけくつろいでいます。
「……まあ、皆で使うのも悪くありませんわね」
「いま何かおっしゃいました?」
「何も申していませんの!」
離れは、その日から談話室として使われるようになりました。
わたくし専用ではありません。
まだ認めてはいませんけれど。




