第6話:お嬢様の朝は早いんですの!
お嬢様の朝は早い。
日の出とともに目覚め、庭園を散歩し、紅茶をいただく。
わたくしが読んだ本には、そう書いてありました。
そこで翌朝。
わたくしは午前五時に目覚ましを設定しました。
完璧ですわ。
そして目を開けると、午前十一時でした。
「……時計が壊れていますわね」
わたくしはベッドから起き上がり、スマートフォンを確認します。
アラーム履歴が、十件。
すべて停止済み。
まったく記憶にありません。
寝室を出ると、小春が廊下を掃除していました。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう。ずいぶん早いですわね」
「もう昼です」
「お嬢様の時間では朝ですの」
「便利ですね」
「朝食を用意なさい」
「片づけました」
「なぜですの!?」
「午前九時までお待ちしました」
「起こしなさいな!」
「五回起こしました」
「嘘ですわ」
「三回目に枕を投げられました」
「そのような野蛮なこと、わたくしがするはずありませんの」
小春が廊下の端を指差しました。
わたくしの枕が落ちています。
「……夢遊病ですわね」
「四回目には『領地ごと燃やしますわよ』と言われました」
「悪役令嬢ですわね」
「五回目は布団に潜って、『あと五分ですの』と」
「それはわたくしですわ」
認めたくありませんが、仕方ありません。
「朝食は?」
「昼食まで我慢してください」
「横暴ですわ!」
「自業自得です」
わたくしのお腹が鳴りました。
小春がこちらを見ます。
「いまのは、屋敷がきしんだ音ですわ」
「お腹から聞こえました」
「お屋敷と主人は一心同体ですの!」
「パンなら一枚残ってますけど」
「いただきますわ!」
「素直ですね」
「べつに空腹ではありませんの。ただ、食品を粗末にできないだけですわ」
小春が笑いながら台所へ向かいます。
わたくしは、その背中を追いかけました。
「ジャムも付けなさいな!」
「空腹じゃないんですよね?」
「礼儀ですわ!」




