第54話:町内会へ参りますわ!
屋敷の郵便受けに、町内会の集まりを知らせる紙が入っていました。
「今週の土曜日ですわね」
「参加されますか?」
小春が尋ねます。
「当然でしょう。地域で暮らしているのですから」
「お嬢様も町内会に参加するんですね」
「お嬢様である前に、住民ですわ」
小春が少し意外そうな顔をしました。
「何ですの?」
「もっと嫌がるかと思っていました」
「失礼ですわね。町内会くらい知っていますの!」
集まりは近所の集会所で行われました。
長机と折り畳み椅子が並び、壁には地域の防災地図が貼られています。
わたくしが中へ入ると、何人かの方がこちらを見ました。
「一ノ瀬さんですよね。あのお屋敷の」
「ええ。一ノ瀬麗奈ですわ」
「いつも綺麗な格好してるねえ」
「ありがとうございます」
注目されるのは嫌いではありません。
大勢に一斉に話しかけられなければ。
会議が始まりました。
内容は防災訓練、街灯の交換、ごみ集積所の清掃、それから公園の草むしり。
「一ノ瀬さんのお宅には、公園の草むしりをお願いしてもよろしいですか?」
「分かりましたわ。何時からですの?」
「朝の八時からです」
「……八時」
「早いですか?」
「いいえ。起きますわ」
問題は草むしりではありません。
朝八時です。
つまり、少なくとも七時台には起きなくてはなりません。
「雨の場合は翌週へ延期です」
「雨を期待しているわけではありませんけれど、承知しましたわ」
会議が終わるころには、回覧板と防災用品の案内を預かっていました。
帰り道。
「お嬢様、本当に草むしりへ行くんですか?」
「わたくしが引き受けた当番ですもの」
「私と橘さんで行っても」
「それでは、わたくしが参加したことになりませんでしょう?」
小春は少し黙ったあと、笑いました。
「では、起こしますね」
「自分で起きますわ!」
「何時に?」
「……七時半ですの」
「集合が八時です」
「七時ですわ!」
土曜日の朝。
目覚まし時計を3つ並べて眠りました。
翌朝、すべて止めた記憶がありませんでした。
「お嬢様、七時を過ぎています」
小春に肩を揺さぶられ、目を開けます。
「……雨は?」
「快晴です」
「そうですの……」
起き上がるまでに、少し時間が必要でしたわ。




