第51話:屋敷で新発見ですわ!
地下の物置を整理していたとき。
棚の奥から、見覚えのない扉が現れました。
「こんな扉、ありましたの?」
「初めて見ました」
小春が埃を払いながら答えます。
橘も屋敷の図面を確認しました。
「図面には記載がございません」
「以前、地下道はないと申していましたわね?」
「確認できた範囲では、ございませんでした」
「やはり、わたくしの推理が正しかったんですの!」
泥棒騒動の際、わたくしは地下道の存在を主張しました。
犯人はいませんでしたけれど、地下道はあったのです。
「開けますわよ!」
古い扉を押すと、冷たい空気が流れてきました。
その先には、石造りの狭い通路。
まさか、本当に地下道でした。
壁には古い照明がありますが、当然つきません。
「灯りを持ってまいります」
橘が申しました。
「待っていては日が暮れますわ!」
「お嬢様、先に入らないでください」
小春の制止を聞かず、わたくしは携帯電話の灯りを頼りに進みました。
二人も仕方なく後ろからついてきます。
通路は湿っていて、天井も低い。
しばらく進んだところで、小春が突然立ち止まりました。
「きゃっ!」
「どうしましたの?」
「む、虫が……!」
壁に、とても大きな虫が張り付いています。
橘も静かに一歩下がりました。
「橘。外へ逃がしなさい」
「別の方法を検討いたしましょう」
「触れませんの?」
「無理に触れる必要はございません」
いつもの落ち着いた顔ですが、明らかに近づこうとしません。
「何を騒いでいますの?」
わたくしは床に落ちていた紙片を使い、虫をそっと乗せました。
「田舎では、この程度いくらでもいましたわ」
「田舎?」
小春が聞き返しました。
「……」
「お嬢様、田舎のご出身なんですか?」
「ち、違いますわ!」
「いま、ご自分で」
「田舎というのは比喩ですの!」
「何の比喩です?」
「自然が豊かという意味ですわ!」
「それを田舎と言うのでは?」
「言いませんの!」
「以前、弟君も田舎からお越しでしたね」
橘まで口を挟みます。
「橘!」
「事実を確認しただけでございます」
「今は虫の話をしていましたでしょう!?」
紙に乗せた虫を通路の端へ逃がし、先へ進みます。
しばらくすると階段が現れました。
上った先にある古い扉を押すと、眩しい光が差し込みます。
「……外ですの?」
目の前には、草木に埋もれた小さな庭。
振り返ると、わたくしたちが出てきたのは古い建物でした。
「こんな建物、屋敷にありましたの!?」
「庭の奥ですね」
蔦と木々に隠れ、今まで誰も気づかなかったようです。
建物の中には、小さな暖炉。
書斎。
寝台。
窓際には古い椅子。
「ここを、わたくし専用の別邸にしますわ!」
「本邸から地下を通って数分です」
「別邸ですの!」
屋敷へ戻ったあと、橘が購入時の資料を持ってきました。
「離れと地下連絡路について、こちらに記載がございます」
「どこですの?」
「三十二ページです」
「そのような後ろまで読む方が悪いですわ!」
「読まない方の問題かと」
新しい別邸を発見した喜びよりも。
田舎出身だと口を滑らせたことの方が、少し気になりましたわ。




