↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
51/100

第51話:屋敷で新発見ですわ!

 地下の物置を整理していたとき。


 棚の奥から、見覚えのない扉が現れました。


「こんな扉、ありましたの?」


「初めて見ました」


 小春が埃を払いながら答えます。


 橘も屋敷の図面を確認しました。


「図面には記載がございません」


「以前、地下道はないと申していましたわね?」


「確認できた範囲では、ございませんでした」


「やはり、わたくしの推理が正しかったんですの!」


 泥棒騒動の際、わたくしは地下道の存在を主張しました。


 犯人はいませんでしたけれど、地下道はあったのです。


「開けますわよ!」


 古い扉を押すと、冷たい空気が流れてきました。


 その先には、石造りの狭い通路。


 まさか、本当に地下道でした。


 壁には古い照明がありますが、当然つきません。


「灯りを持ってまいります」


 橘が申しました。


「待っていては日が暮れますわ!」


「お嬢様、先に入らないでください」


 小春の制止を聞かず、わたくしは携帯電話(スマホ)の灯りを頼りに進みました。


 二人も仕方なく後ろからついてきます。


 通路は湿っていて、天井も低い。


 しばらく進んだところで、小春が突然立ち止まりました。


「きゃっ!」


「どうしましたの?」


「む、虫が……!」


 壁に、とても大きな虫が張り付いています。


 橘も静かに一歩下がりました。


「橘。外へ逃がしなさい」


「別の方法を検討いたしましょう」


「触れませんの?」


「無理に触れる必要はございません」


 いつもの落ち着いた顔ですが、明らかに近づこうとしません。


「何を騒いでいますの?」


 わたくしは床に落ちていた紙片を使い、虫をそっと乗せました。


「田舎では、この程度いくらでもいましたわ」


「田舎?」


 小春が聞き返しました。


「……」


「お嬢様、田舎のご出身なんですか?」


「ち、違いますわ!」


「いま、ご自分で」


「田舎というのは比喩ですの!」


「何の比喩です?」


「自然が豊かという意味ですわ!」


「それを田舎と言うのでは?」


「言いませんの!」


「以前、弟君も田舎からお越しでしたね」


 橘まで口を挟みます。


「橘!」


「事実を確認しただけでございます」


「今は虫の話をしていましたでしょう!?」


 紙に乗せた虫を通路の端へ逃がし、先へ進みます。


 しばらくすると階段が現れました。


 上った先にある古い扉を押すと、眩しい光が差し込みます。


「……外ですの?」


 目の前には、草木に埋もれた小さな庭。


 振り返ると、わたくしたちが出てきたのは古い建物でした。


「こんな建物、屋敷にありましたの!?」


「庭の奥ですね」


 蔦と木々に隠れ、今まで誰も気づかなかったようです。


 建物の中には、小さな暖炉。


 書斎。


 寝台。


 窓際には古い椅子。


「ここを、わたくし専用の別邸にしますわ!」


「本邸から地下を通って数分です」


「別邸ですの!」


 屋敷へ戻ったあと、橘が購入時の資料を持ってきました。


「離れと地下連絡路について、こちらに記載がございます」


「どこですの?」


「三十二ページです」


「そのような後ろまで読む方が悪いですわ!」


「読まない方の問題かと」


 新しい別邸を発見した喜びよりも。


 田舎出身だと口を滑らせたことの方が、少し気になりましたわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。