第46話:犯人はわたくしでしたわ!
「お嬢様。少々、よろしいでしょうか」
朝食後。
橘に呼ばれ、わたくしは洗濯室へ向かいました。
「ついに犯人が分かりましたの!?」
「まず、こちらをご覧ください」
橘が洗濯済みの衣類を示します。
その中に、なくなっていた下着と寝間着の上着がありました。
「どうしてここに?」
「お嬢様が洗濯かごへ入れたものです」
「記憶にありませんわ」
「次はこちらを」
小春が、衣装部屋からドレスを持ってきました。
胸元には、なくなっていた髪飾りとリボン。
「昨日、お嬢様が付け替えてました」
「そうでしたかしら……」
「手袋は、こちらです」
橘が旅行鞄を開きます。
中には、新しい手袋と古い手袋が何組も入っていました。
「なぜ旅行鞄に?」
「急なお出かけに備えると、お嬢様ご自身が入れておりました」
「……少し、思い出してきましたわ」
続いて応接室。
ソファの隙間から扇子。
本棚の裏から読みかけの本。
寝台の下から靴下。
机の引き出しから鍵。
菓子については、空袋がいくつも見つかりました。
「すべて、お嬢様がご自身で移動させたものです」
「ですが、覚えていませんの!」
「忘れていただけです」
「では、以前なくなった物も?」
「おそらく」
「下着も?」
「洗濯へ出しただけです」
「お菓子も?」
「夜中に召し上がっています」
「証拠はありますの?」
小春が携帯電話を取り出しました。
「昨日、張り込み中に食べてました」
画面には、眠そうな顔で菓子を食べているわたくし。
「消しなさい!」
「犯人の証拠です」
「わたくしではありませんわ! 寝ぼけていますの!」
「寝ぼけているお嬢様です」
反論できません。
屋敷へ泥棒など入っていなかった。
物を移動させ。
食べ。
洗濯へ出し。
そのすべてを忘れていたのは。
「では、泥棒は……」
「お嬢様です」
「……わたくし?」
「はい」
ノアは、わたくしの足元へ座り、顔を見上げています。
泥棒を捕まえるために連れてこられたのに。
最初から、捕まえるべき相手などいなかったのです。
「……わたくしのせいでしたのね」
小春と橘が、少し意外そうな顔をしました。
「何ですの?」
「また犯人に操られたと言い張るかと思いました」
「そこまで見苦しくありませんわ!」
少し言おうとはしましたけれど。
わたくしはノアの頭を撫でました。
「泥棒など、最初からいませんでしたのね」
「わん」
「ですが、あなたを迎えたことは間違いではありませんの」
ノアが立ち上がり、大きな身体を寄せてきます。
わたくしは今度こそ、しっかり受け止めました。
「これからは、物を置いた場所を覚えておきますわ!」
「無理そうなので、記録してください」
小春が小さな手帳を差し出しました。
表紙には、大きな文字で書かれています。
『お嬢様が物を置いた場所』
「こんなもの、必要ありませんわ!」
そう言いながら。
なくした扇子を置いた場所を、最初のページへ書いておきました。




