第44話:お嬢様の寝相は良いですわ!
朝。
目を覚ますと、身体が動きませんでした。
「……重いですわ」
布団の上に、何かが乗っています。
顔を上げると、ノアが寝台の横から上半身だけを乗せていました。
「どうしてここにいますの?」
「わん」
「返事をしても分かりませんわ!」
どうやら夜中に部屋へ入り、そのまま眠ってしまったようです。
扉を閉め忘れた覚えはありません。
おそらく小春か橘が開けたのでしょう。
「ノア。降りなさい」
動きません。
「重いですの!」
大きな頭を押しても、びくともしません。
そのとき、小春が部屋へ入ってきました。
「おはようございます」
「ちょうどよかったですわ! ノアをどかしなさい!」
「仲良く寝てたんですね」
「寝ていませんの! 押し潰されていただけですわ!」
小春がノアへ声をかけると、素直に床へ降りました。
「なぜ小春の言うことは聞きますの?」
「お嬢様も普通に頼めば聞くと思いますよ」
「普通に頼みましたわ!」
「ほとんど命令では?」
寝台から起き上がると、枕が見当たりません。
「小春。わたくしの枕は?」
「そこです」
床に落ちています。
「犯人はノアですわね!」
「お嬢様が蹴り落としたのでは?」
「そんな寝相ではありませんの!」
すると小春が、寝台の反対側から毛布を拾いました。
さらに、足元からクッション。
床には靴下が片方。
「お嬢様、寝ている間にかなり動いてますよね?」
「あり得ませんわ!」
ノアが床の靴下をくわえ、わたくしへ差し出しました。
「まあ。見つけてくれましたの?」
「わん!」
「さすが番犬ですわ!」
「それ、前からなくなってた靴下では?」
わたくしは一瞬、黙りました。
「犯人が、この部屋へ戻したんですの」
「どうして返したんです?」
「良心が痛んだのでしょう!」
小春は何も言わず、靴下を洗濯かごへ入れました。




