第43話:アリサさんには渡しませんわ!
「まあ。随分と大きな犬ですのね」
屋敷を訪れたアリサさんは、庭にいるノアを見て目を丸くしました。
「我が屋敷の番犬、ノアですわ!」
「番犬?」
「ええ。泥棒対策ですの」
「泥棒が入ったんですの?」
「わたくしの下着まで盗まれましたわ!」
「声を抑えなさいな!」
アリサさんが慌てて周囲を見回します。
ノアはアリサさんへ近づき、匂いを確かめました。
「あら。ごきげんよう」
アリサさんが頭を撫でると、ノアは嬉しそうに尻尾を振ります。
「ノア。こちらへ来なさい」
呼んでも、アリサさんの足元から離れません。
「随分と懐いていますわね」
「誰にでも愛想がよいだけですの!」
アリサさんが庭を歩けば、ノアもついていく。
椅子へ座れば、その隣へ伏せる。
わたくしが呼んでも、ちらりとこちらを見るだけです。
「ノア!」
「麗奈さん。大きな声を出さなくても聞こえていますわ」
「あなたへ申しているのではありませんの!」
アリサさんは楽しそうに、ノアの耳の後ろを撫でています。
「この子、わたくしの屋敷へ連れて帰ってもよろしくて?」
「駄目ですわ!」
即答しました。
「冗談ですの」
「冗談でも許しませんわ!」
「番犬として迎えたのでしょう? ずいぶん気に入っていますのね」
「べ、別に!」
言いかけて、やめました。
「……気に入っていますわ」
アリサさんが少し驚いた顔をします。
「何ですの?」
「いいえ。ずいぶん素直になりましたのね」
「気に入っているものを気に入っていると申しただけですわ!」
そのとき、ノアが急に立ち上がり、こちらへ走ってきました。
わたくしの足元へ座り、大きな頭を押しつけてきます。
「ほら。結局わたくしが一番ですの!」
「何を張り合っていますの?」
「張り合ってなどいませんわ!」
そう言いながら、ノアの頭を撫でる手は止めませんでした。




