第40話:立派な名前を授けますわ!
新しく屋敷へ迎えた犬には、まだ正式な名前がありませんでした。
「保護先では、仮の呼び名が付けられていたそうですが」
橘が申します。
「必要ありませんわ。わたくしが相応しい名を授けますの!」
今度こそ、誰にも勝手な名前で呼ばせません。
シロのときは、少々長すぎたのが敗因でした。
今回は短く。
覚えやすく。
それでいて高貴。
わたくしは一晩かけて考えました。
「決まりましたわ!」
犬を庭へ座らせ、小春と橘を集めます。
「この子の名前は、ノアですの!」
「普通ですね」
小春が申しました。
「何ですの、その反応は!」
「もっと長い名前が来るかと思ってました」
「わたくしも学習するんですの!」
ノア。
響きが柔らかく、品もある。
大きな身体にもよく似合っています。
「ノア」
呼ぶと、犬がこちらを見ました。
「ノア。おいでなさい」
次の瞬間、勢いよく駆けてきます。
「待ちなさい! 走らなくてよろしいですわ!」
今度は飛びつかず、わたくしの目の前で座りました。
「まあ……」
「気に入ったようですね」
「当然ですわ。わたくしが付けた名前ですもの!」
頭を撫でると、ノアは嬉しそうに目を細めます。
「ノア」
「わん!」
「ノア」
「わん!」
「ふふん。完璧ですわね」
小春も呼んでみました。
「ノア」
「わん!」
橘も。
「ノア」
「わん!」
「……誰が呼んでも同じではありませんの?」
「自分の名前ですから」
「最初に呼んだのは、わたくしですわ!」
名前は無事に定着しました。
今度こそ、略されてもいません。
「シロも見習うべきですわね」
窓辺のシロへ声をかけます。
「白銀公爵エリザベート・フォン・ローゼンベルク」
シロは目も開けませんでした。
「……シロ」
「にゃあ」
「なぜですの!?」




