第4話:優雅にお茶をいただきますわ!
掃除を始めて三時間。
さすがのわたくしも、休憩が必要です。
「小春。紅茶を淹れなさい」
「いま手が離せません」
「では橘」
「修理業者と打ち合わせ中です」
「……使用人が足りませんわ!」
仕方ありません。
お嬢様たるもの、紅茶くらい自分で淹れられますわ。
ネット動画で何度も見たことがありますもの。
お湯を沸かし、温めたポットへ茶葉を入れる。
時間を計り、優雅にカップへ注ぐ。
簡単ですわ。
「まず、お湯ですわね」
台所に入り、電気ケトルを探します。
ありません。
代わりに、大きな薪のかまどがありました。
「……ファンタジーすぎませんこと?」
わたくしはスマートフォンで検索しました。
かまど、火のつけ方。
薪、組み方。
お嬢様、紅茶、自分で淹れる。
最後の検索結果は役に立ちませんでした。
三十分後。
わたくしは煤だらけになりながら、ようやく湯を沸かしました。
「お茶が入りましたわ!」
玄関ホールにいる二人の前へ、ティーカップを並べます。
「わたくしが淹れて差し上げましたの。感謝して飲みなさい」
「ありがとうございます」
小春が一口飲みました。
表情が固まります。
橘も飲みました。
静かにカップを置きました。
「いかが?」
「非常に個性的なお味です」
「当然ですわ!」
「お嬢様、茶葉は何杯入れました?」
「たった十杯ですわ」
「何人分です?」
「三人分ですけれど」
「多いです」
「濃い方が高級でしょう?」
「高級と濃度は関係ありません」
わたくしも一口飲みます。
「にっがぁっ!」
思わず普通の声が出ました。
小春が口元を押さえています。
「いま笑いましたわね?」
「笑ってません」
「目が笑っていますわ!」
「お砂糖、入れますか?」
「結構ですの!」
そう言いながら、角砂糖を一つ。
二つ。
三つ。
最終的に十一個入れました。
「甘いですわ……」
「それはそうでしょうね」
「ふん。べつに、あなた方のために淹れたわけではありませんの」
「はい」
「わたくしが飲むついでですわ」
「はい」
「……残すのは、もったいないでしょう?」
小春は少し笑って、再びカップを持ちました。
「全部飲みますよ」
「最初からそう言いなさいな」




