第37話:シロもお嬢様にしますわ!
我が屋敷に暮らす者には、相応の品格が必要です。
それは、猫であっても例外ではありませんの。
「というわけで、頼んでいたものがようやく届きましたわ!」
わたくしはテーブルの上に、小さな衣装を広げました。
白と桃色を基調にしたドレス。
胸元には大きなリボン。
裾には細かなレースを重ね、中央には宝石を模した飾りまで付いています。
「猫用の服ですか?」
小春が手に取ります。
「ただの服ではありませんわ。シロ専用のお嬢様衣装ですの!」
「シロ、お嬢様になるんですね」
「我が屋敷の猫ですもの。いつまでも裸では困りますわ!」
「猫は普通、裸ですよ」
「庶民の猫と一緒にしないでくださる?」
シロは窓辺で丸くなっていました。
わたくしは衣装を抱え、ゆっくり近づきます。
「シロ。喜びなさい。あなたを立派なお嬢様にして差し上げますわ」
シロが薄く目を開きました。
「さあ、こちらへ」
一歩近づく。
シロが立ち上がる。
さらに近づく。
シロが後ずさる。
「どうして逃げますの?」
手を伸ばした瞬間。
「シャーッ!」
「ひゃっ!?」
シロは椅子の下へ逃げ込みました。
「衣装を用意したのは、わたくしですのよ!?」
「その恩は猫には伝わらないと思います」
「では、小春。捕まえなさい」
「怖がらせない方がいいですよ」
小春は床へしゃがみ、静かに手を差し出しました。
「シロ、おいで」
「にゃあ」
あっさり出てきました。
しかも自分から小春の膝へ乗ります。
「なぜですの!?」
「じっとしててね」
小春が衣装を着せても、シロはまったく抵抗しませんでした。
リボンを結び、裾を整える。
完成した姿は、想像以上に愛らしいものでした。
「まあ……!」
白い毛に桃色の衣装がよく映えています。
「とても似合っていますわ!」
「可愛いですね」
わたくしは抱き上げようと手を伸ばしました。
「シャーッ!」
「どうしてわたくしだけですの!?」
シロは小春の膝から降りようとしません。
衣装を用意したのも、代金を払ったのも、わたくしですのに。
「いつか必ず、わたくしの膝にも乗せてみせますわ!」
わたくしが決意を固める横で、先日受け取ったシロの健康診断の結果を確認していた橘が、こっそりと言いました。
「ところで、小春」
「はい?」
「シロは雄だそうです」
「……このこと、お嬢様には?」
橘は、お嬢様衣装を着たシロを見ました。
「本日は黙っておきましょう」




