第36話:また遊びに来てもいいですわ!
アリサさんが帰る時間になりました。
玄関前には迎えの車が停まっています。
「本日は、随分と騒がしかったですわね」
「誰のせいですの?」
「麗奈さんでしょう?」
「あなたですわ!」
先ほどまで大喧嘩していたはずなのに、帰るころにはいつもどおりです。
アリサさんが車へ向かいかけ、途中で足を止めました。
「麗奈さん」
「何ですの?」
「来週も、遊びに来てもよろしくて?」
「また勝負するおつもり?」
「次は、別の遊びにしますわ」
「負けるのが怖いんですのね」
「勝ったのはわたくしですわ!」
「最後は引き分けでしたの!」
また言い争いになりそうです。
運転手が、静かに時計を確認しました。
「……来週も来ればよろしいでしょう」
「仕方なくですのよ」
「わたくしも、仕方なく迎えますわ」
アリサさんは車へ乗り込みました。
窓が閉まる直前、小さく手を振ります。
わたくしも、少しだけ手を上げました。
車が門の外へ消えていきます。
「仲直りしたんですね」
隣に立つ小春が申しました。
「喧嘩などしていませんわ」
「クソガキって言ってましたけど」
「あれは正当な評価ですの」
「向こうも同じことを思ってそうですね」
「失礼ですわね!」
屋敷へ戻ろうとすると、玄関前に小さな包みが落ちていました。
中には、先ほどアリサさんが食べたものと同じお菓子。
短いメモが添えられています。
『先ほどはいただきましたので。次回は、こちらを半分にいたしましょう』
「……最初から半分にすればよかったんですの」
そう言いながら。
わたくしは、その包みを大切に抱えて屋敷へ戻りました。




