第35話:クソガキですわ!
その日の午後。
わたくしとアリサさんは、応接室でボードゲームをしていました。
現在、わたくしが優勢。
「これで終わりですわ!」
最後の駒を進めます。
「わたくしの勝ちですの!」
「……もう一度ですわ」
「嫌ですの」
「三本勝負にいたしましょう」
「最初に一回勝負と決めましたわ!」
「聞いていませんの」
「決めましたわ!」
アリサさんは不満そうに盤面を見ています。
次の瞬間。
アリサさんの袖が駒に触れ、配置が崩れました。
「あら」
「いま、わざとやりましたわね?」
「事故ですの」
「絶対にわざとですわ!」
「証拠はありますの?」
涼しい顔で紅茶を飲んでいます。
さらに、最後に残っていたお菓子へ手を伸ばしました。
「それは、わたくしのですわ!」
「名前は書いてありませんの」
「残しておいたんですの!」
「では、いただきますわ」
ぱくり。
食べました。
わたくしのお菓子を。
「もう我慢なりませんわ!」
「何ですの?」
「この……クソガキですわ!」
応接室が静まり返りました。
アリサさんの目が大きく開きます。
「あなたにだけは言われたくありませんの! わたくしのどこがクソでガキですの!?」
「全部ですわ!」
「何ですって!?」
「お二人ともあまり変わりませんよ」
紅茶を運んできた小春が、淡々と申しました。
「どこがですの!?」
二人の声が重なりました。
勝負は最初からやり直しになりました。




