第30話:完璧なお嬢様の正体ですわ!
学校見学を終えた帰り道。
わたくしは、隣を歩くアリサさんをじっと見ていました。
「先ほどから何ですの?」
「学校では、随分と完璧でしたのね」
「学校以外でも完璧ですわ」
「皆さん、あなたを一度も取り乱さない方だと思っていましたわ」
「そのように振る舞っていますもの」
アリサさんは、あっさりと認めました。
「演じていますの?」
「求められる姿でいるだけですわ」
「疲れませんこと?」
「慣れていますもの」
それだけ言って、アリサさんは前を向きます。
学校では、誰に対しても優しく、落ち着いていて、隙がありませんでした。
わたくしの前にいるときとは、大違いです。
「では、わたくしの前でお菓子の大きさに怒るのは?」
「それとこれとは別ですわ」
「ゲームで負けて何度もやり直しを求めるのは?」
「負けたまま終える方が悪いんですの」
「いま、少しずつ普段の顔へ戻っていますわよ」
「誰のせいですの!」
アリサさんが頬を膨らませました。
これですわ。
学校では一度も見せなかった、年相応の顔。
「麗奈さんの前では、調子が狂いますの」
「わたくしのせいにしないでくださる?」
「でも」
アリサさんは少しだけ声を落としました。
「あなたの前では、気を張らなくて済みますわ」
「そうですの?」
「何ですの、その嬉しそうな顔は」
「別に。悪くないと思っただけですわ」
「気持ち悪いですの」
「最後の一言が余計ですわ!」
その直後。
アリサさんは菓子店の前で足を止めました。
期間限定のプリンが並んでいます。
「麗奈さん」
「何ですの?」
「学校の皆さんには秘密ですわよ」
完璧なお嬢様は、プリンを3つ買いました。
2つではありません。
3つですの。




