第29話:本物のお嬢様に囲まれましたわ!
アリサさんの教室へ案内されると、わたくしは再び大勢の生徒に囲まれました。
「麗奈さんは、どのようなお茶がお好き?」
「お屋敷には薔薇園があると伺いましたわ」
「その髪飾り、とても可愛らしいですのね」
「今度、ぜひ我が家にもいらしてください」
皆さん、悪意はありません。
むしろ、とても親切です。
だからこそ逃げられませんの!
「ええ。機会がございましたら……」
返事をしながら、少しずつアリサさんの隣へ移動します。
「皆さん、麗奈さんは本日が初めてですの。あまり困らせてはいけませんわ」
「九条院さんがご友人を連れてくるのが珍しくて、つい」
「そうですの?」
わたくしが尋ねると、近くの生徒が頷きました。
「九条院さんは、いつもお忙しいですもの」
「学年首席ですし」
「礼法の校内代表も務めていらっしゃいますわ」
「語学大会では、二年続けて最優秀賞ですのよ」
「生徒会でも中心になって活動されています」
わたくしは、ゆっくりアリサさんを見ました。
アリサさんは何事もなかったように、机の上を整えています。
「……アリサさん」
「何ですの?」
「あなた、そんなにすごい方でしたの?」
「普通ですわ」
「どこが普通ですの!?」
思わず声が大きくなりました。
教室中の視線が集まります。
「麗奈さん。お静かに」
「だって、何も聞いていませんわ!」
「聞かれませんでしたもの」
「一つくらい自分から言ってもよろしいでしょう?」
「自慢するようで、はしたないですわ」
正論です。
ですが、どうにも納得できません。
わたくしの知るアリサさんは、ゲームで負ければ再戦を要求し、お菓子が私のより少し小さいだけで文句を言う方です。
その方が、学年首席でここまで優秀とは。
「何ですの、その目は」
「人は見かけによらないものですわね」
「失礼ですわ!」
そのとき、先生が教室へ入りました。
生徒たちが一斉に姿勢を正します。
アリサさんも、すぐに完璧な表情へ戻りました。
わたくしは、その横顔を見ながら思いました。
本当に、何者ですの?




