第23話:庶民の遊びで勝負ですわ!
雨の日。
アリサさんが我が屋敷へ遊びに来ました。
庭へ出られず、二人で応接室に座っています。
「暇ですわね」
「そうですわね」
紅茶は飲み終わりました。
お菓子もありません。
会話も、いったん尽きました。
「お二人で遊ばれては?」
小春が、棚からトランプを取り出しました。
「庶民の遊びですの?」
アリサさんが、不思議そうにカードを眺めます。
「簡単ですよ」
「わたくし、もちろん知っていますわ」
本当は動画で見たことがあるだけです。
「では、神経衰弱にしましょう」
小春にルールを教わり、勝負が始まりました。
最初は、わたくしが優勢。
「ふふん。この程度、記憶力の問題ですわ」
「まだ始まったばかりですの!」
ところが途中から、アリサさんが連続でカードを当て始めました。
「こちらと、こちらですわ」
「またですの!?」
「先ほど見ましたもの」
「そんな場所にありました?」
「ありましたわ」
わたくしは焦りました。
このままでは負けます。
次の二枚。
違う。
「もう一度ですの!」
「順番ですわ」
「少しくらいよろしいでしょう!」
「規則は規則ですの!」
最後の一組をアリサさんが揃え、勝負は終了しました。
「わたくしの勝ちですわね」
「一回だけで勝敗を決めるなんて卑怯ですの!」
「最初に何も言わなかったでしょう?」
「三本勝負ですわ!」
三本勝負は、五本勝負になりました。
五本勝負は、十本勝負になりました。
「もう夕食の時間ですよ」
小春が止めに入ります。
「あと一回ですの!」
「次こそ決着をつけますわ!」
二人同時に声を上げました。
小春はため息をつきます。
「さっきから、ずっと決着してますけど」
庶民の遊び。
思ったよりも、奥が深いですわ。




