第22話:小春に休日を与えますわ!
「明日は休みなさい」
夕食後。
わたくしが告げると、小春は驚いた顔をしました。
「急ですね」
「使用人にも休息は必要ですもの」
「本当に一日休んでいいんですか?」
「当然ですわ。わたくしを誰だと思っていますの?」
「分かりました。ありがとうございます」
翌朝。
小春は出かけました。
屋敷には、わたくしと橘だけ。
何の問題もありません。
「橘。紅茶を」
「修繕業者との打ち合わせがございます」
「では、わたくしが自分で淹れますの」
一時間後。
台所には、苦すぎる紅茶と焦げたパンが完成しました。
着替えようとすれば、ドレスの背中へ手が届かない。
髪を整えようとすれば、左右で形が違う。
昼食を作れば、鍋から不穏な煙が上がりました。
「小春は、いつ戻りますの?」
「夕方の予定です」
「まだ昼ですの!?」
何度も連絡しようとして、そのたびにスマートフォンを伏せました。
休ませると決めたのは、わたくしです。
呼び戻すわけにはいきません。
夕方。
玄関の扉が開く音が聞こえました。
「ただいま戻りました」
わたくしは玄関ホールへ駆けつけました。
「遅いですわ!」
「予定どおりですけど」
「屋敷の時間では遅いんですの!」
小春は、わたくしの髪と、少し焦げた袖を見ました。
「大丈夫でした?」
「完璧でしたわ」
「台所から煙の匂いがします」
「演出ですの」
「髪も片方ほどけてますよ」
「流行ですわ!」
小春は笑いながら、鞄から小さな箱を取り出しました。
「お土産です」
「わたくしに?」
「はい。お嬢様が好きそうだったので」
中には、可愛らしいリボンが入っていました。
「……悪くありませんわね」
「気に入りました?」
「使用人からの贈り物ですもの。仕方なく使って差し上げますわ」
翌朝。
わたくしは、そのリボンを髪へ付けました。
「気に入ってるじゃないですか」
「使用感を確かめているだけですの!」




