第21話:わたくしの肖像画ですわ!
立派なお屋敷には、当主の肖像画が必要です。
そこで、著名な画家を招き、わたくしの姿を描かせることにしました。
「もう少し顎を上げてください」
「こうですの?」
「上げすぎです」
「注文が多いですわね」
わたくしは豪華な椅子へ座り、扇子を持って微笑みました。
この姿が後世まで残る。
そう考えれば、多少じっとするくらい簡単ですわ。
十分後。
「まだ終わりませんの?」
「始まったばかりです」
「同じ姿勢は疲れますわ」
「動かないでください」
さらに十分。
「扇子を持つ手が痛いですの」
「少し休憩しますか?」
「お嬢様は弱音など吐きませんわ!」
五分後。
「休憩にしますの!」
椅子を替え。
扇子を替え。
ドレスも替え。
最後には、シロを抱いた姿を描かせようと思いつきました。
「シロ。こちらへ来なさい」
猫を抱き上げようとします。
「シャーッ!」
「なぜですの!?」
シロはわたくしの腕をすり抜け、画家の足元へ逃げました。
わたくしは追いかけます。
「待ちなさい!」
「お嬢様、動かないでください!」
「猫を捕まえてからですの!」
部屋の中を一周。
椅子へ足をぶつけ。
絵の具を倒しかけ。
最後は小春に捕まりました。
「もう座ってください」
「シロが悪いんですの!」
「猫を描く予定はなかったでしょう」
数日後。
完成した肖像画が、大広間へ飾られました。
椅子に腰掛け、扇子を持ち、気高く微笑むわたくし。
「素晴らしいですわ……!」
完璧なお嬢様そのものです。
ところが、絵の隅。
小さく描かれたシロが、わたくしから逃げています。
「なぜ猫まで描きましたの!?」
「とても印象に残ったので」
「消しなさいな!」
「すでに完成しております」
使用人たちは、立派な肖像画だと褒めてくれました。
ただし小春だけは、絵の隅を見るたびに笑っています。




