第19話:お姉さまとお呼びなさいな!
弟が来て二日目。
本日は、アリサさんとのお茶会です。
弟には部屋で静かにしているよう、厳重に申しつけておきました。
「決して応接室へ来てはなりませんわよ」
「何で?」
「あなたは余計なことを話すからですの!」
「別に何も言わんけど」
「昨日だけで十二件も話しましたわ!」
扉を閉め、わたくしは応接室へ向かいました。
「ごきげんよう、麗奈さん」
「ごきげんよう、アリサさん」
本日の紅茶もお菓子も完璧。
壁紙も、今度こそしっかり貼られています。
何事もなく終わるはずでした。
「姉ちゃん、充電器どこ?」
弟が、普通に入ってきました。
応接室が静まり返ります。
「……姉ちゃん?」
アリサさんが、わたくしを見ました。
「誰のことでしょう?」
「目の前の姉ちゃん」
「お黙りなさいな!」
弟はようやくアリサさんへ気づき、軽く頭を下げました。
「弟です。どうも」
「まあ。麗奈さんに弟がいらしたのね」
「田舎から勝手に来ましたの」
「呼ばれたから来たんやけど」
「話を合わせなさい!」
アリサさんは、弟を興味深そうに眺めます。
「幼いころの麗奈さんは、どのようなお嬢様でしたの?」
最悪の質問ですわ。
わたくしは弟の足を踏みました。
「痛っ」
「どうなさいましたの?」
「何でもありませんわ」
弟は、わたくしを横目で見ました。
「姉ちゃんは昔――」
「弟!」
「ずっと部屋でパソコン触ってました」
終わりましたわ。
しかし、橘がすぐに口を開きました。
「幼少期より、情報技術と領地経営について学んでおられました」
「ゲームしてただけやけど」
「庶民文化の研究です」
今度は小春が補足します。
「夜中までやってたで」
「海外との時差に合わせた活動でございます」
橘、完璧ですわ!
アリサさんは感心したように頷きました。
「幼いころから勉強熱心でしたのね」
「当然でしょう?」
わたくしは胸を張りました。
弟が呆れた目を向けてきます。
「ところで」
アリサさんが首を傾げました。
「弟さんは、麗奈さんをお姉さまとは呼ばないのね」
「何度言っても直しませんの!」
「姉ちゃんは姉ちゃんやろ」
「わたくしはお嬢様ですのよ!」
「俺にとっては姉ちゃんやん」
正論のような顔をするのが腹立たしいですわ!
「せめて、人前ではお姉さまとお呼びなさいな!」
「嫌」
「お小遣いを差し上げますわ」
「お姉さま」
「即答ですのね!?」
アリサさんが、扇子の向こうで笑っていました。




