破滅ロドリゲス
王都の冒険者ギルド。勇者パーティーの拠点があるはずのその場所で、勇者ゼロの情けない悲鳴が響き渡っていた。
「チィッ!! なんでギルドの預金残高がマイナスになってんだよ! おかしいだろ!」
窓口のカウンターをバンバンと叩くゼロに対し、ベテランのギルド職員は氷のように冷たい視線を向けていた。
「おかしいのはあなた方の金銭感覚です」
職員は、分厚い請求書の束をドンッとカウンターに叩きつけた。
「あなた方は高価な宿代、ポーション代、武器の修理費、さらには新しいポーターへの『超高額なオプション料金』を、後先考えずにすべてギルドへの借金として支払っています。クエストでの稼ぎを、支出がとうに上回っているんですよ」
「なっ……」
「現在のマイナス分は、すべてギルドへの多額の借金です。返済していただかないと、勇者パーティーのギルド登録を抹消いたします」
ゼロと魔法使いシャルは言葉に詰まった。
新しいポーターへの支払いで火の車だったことに加え、これまでの経費管理のすべてをアレンに押し付けていたため、自分たちがどれだけお金を使っているか全く把握していなかったのだ。
「ふ、ふざけんな! 俺は勇者だぞ! 少し待てば絶対稼いで返す!」
「わかりました、ではこの様なクエストはどうですか?拒否する権利はありますが、その様な余裕はないかと存じます」
ギルドの受付は、ここぞとばかりに難易度が高く、面倒なクエストを押し付ける。
日々の食事はおろか、ボロボロになった武器の修理費すら出せず、借金地獄の現実を突きつけられた勇者と魔法使いはしぶしぶクエストを受けることにした。
これまでのアレンへの理不尽な扱いのツケが、最悪の形で彼らの首を絞め上げているのは間違いないだろう。
そんな彼らを尻目に、酒場の片隅のテーブルでは、僧侶のミランが一人、妖しい手つきでタロットカードを並べていた。
「……ええ、出ています。カードが示すアレンの現在地……そして、新しい環境へと移った時期。フフッ、やはり運命の輪は私とアレンを結びつけている……」
彼女は、濁った瞳でタロットの『恋人(逆位置)』をねっとりと撫でると、おもむろに立ち上がった。
「おいミラン! お前、少しは隠し金持ってんだろ! 借金返済の足しに出せ!」
そう言って来るゼロを、ミランは汚物を見るような目で見下ろした。
「お断りします。自分たちの支出すら把握できず、借金まみれになって泣き喚くような無能な方々と、これ以上馴れ合うつもりはありません。私は、愛しいアレンを迎えに行きますので。さようなら、生ゴミの皆さん」
ミランは呆然とする二人を置き去りにして、杖を抱きしめながら颯爽と王都を後にした。
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