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「よわよわショボいポーター実は最強のスキル待ち〜追放されたので、なぜか女子パーティーに拾われ溺愛されています〜」  作者: 虹の箸
新しい旅立ち

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対照的なパーティ

泥にまみれた大和国の村に、ひどく冷たく、重苦しい静寂が降りていた。


「……役立たず、だと?」

村の長の言葉を聞いた瞬間。


これまで山を砕き、森を焼き払うような勢いで暴走していたヒロインたちの放つ魔力が、ふっとその熱を失った。


代わりに周囲を包み込んだのは、胸が張り裂けるような深い悲哀と、どうしようもない喪失感だった。


セレナの足元から、パキパキと音を立てて霜が広がっていく。


それは怒りに任せた攻撃魔法ではない。彼女の心を満たす悲しみが、無意識のうちに周囲の熱を奪ってしまっているのだ。


「あの優しくて、愚かなほどお人好しな子が……」

セレナは両手で顔を覆い、その肩を震わせた。


「あの気弱な子が、言葉も通じないこの国で、どんな思いで……得体の知れない魔獣たちと一緒に、あなたたちを助けたと思っているの……ッ」


彼女たちの頭の中には、容易に想像がついてしまった。


理不尽な理由で村を追い出されたアレンが、それでも傷ついた者を見捨てられず、自分の身を削ってまで誰かに手を差し伸べる姿が。


そして、その優しさを無惨に踏みにじられ、また居場所を失ってトボトボと歩き出す、小さな背中が。


カラン、と。

エリアリアの手から、神滅の聖剣が滑り落ちて泥に塗れた。


彼女はそのまま膝から崩れ落ち、かつてアレンが立っていたであろう泥だらけの地面を、両手でそっとすくい上げた。

「……ごめんなさい、アレン。ごめんなさい……」

最強の騎士と謳われた彼女の瞳から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。


「私たちが、もっと言葉にして伝えていれば。あなたがいなきゃ駄目なんだって、あなたが私たちの世界のすべてなんだって、ちゃんと伝えていれば……あなたはこんな遠い国で、誰かに心無い言葉をぶつけられて傷つくことなんて、なかったのに……ッ!」


泥だらけの地面に額を擦り付けるようにして泣き崩れるエリアリアの背中を、リティがしゃくり上げながら抱きしめる。クラリスも、ミランも、声にならない声を上げて泣いていた。


彼女たちは、村人たちを力で罰することすら忘れていた。


ただ、自分たちの最愛の人がこの地で傷つき、そして再びいなくなってしまったという事実だけが、彼女たちの心を深く、容赦なく抉っていた。


「……西へ、戻りましょう」

やがて、泥で汚れた顔を上げたエリアリアが、掠れた声で言った。


その瞳の奥には、もう二度とアレンの手を離さないという、祈りにも似た切実な光が宿っていた。


「あの子はきっと、西へ向かった。……次こそは絶対に、私たちが先に見つけるの。そして、あの子を傷つけるすべてのものから、あの子を隠して、守り抜くわ」


すれ違ってしまった西の空を見つめ、彼女たちは再び歩き出す。


その足取りは重く、けれどその胸に抱いた愛情は、以前よりもずっと深く、逃れようのないものへと変わっていた。


一方、西の大陸へと向かう大型の渡り鳥(定期船)の甲板では、抜けるような青空の下、ぽかぽかとした穏やかな時間が流れていた。


「ふふ、そこが気持ちいいのか、クオン」

「うむ……そこじゃ、その耳の裏がたまらん……アレン、お主の手は本当に魔法のようじゃのう」


潮風に吹かれながら、僕は【限定空間収納(ワン・キューブ)】から取り出した特製のブラシで、クオンの黄金の毛並みをゆっくりと梳いていた。


足元では、船の揺れにすっかり慣れたレンがお腹を出して昼寝をしており、僕の首元ではカザネが「海風も涼やかで悪くないのう」と心地よさそうに目を閉じている。


少し離れた甲板の端では、ゴウが船員たちに混ざって「オデも手伝う!」と楽しそうに帆綱を引いていた。船員たちも最初はゴウの大きさに怯えていたが、彼のニコニコとした笑顔と底抜けの人の良さに、今ではすっかり打ち解けている。


「……平和だなぁ」

僕はブラシを置き、輝くような青い海と、はるか遠くに見える大陸の影を見つめた。


大和国での出来事は少し悲しかったけれど、こうして僕の隣には、僕を必要としてくれる新しい家族がいる。


不意に、西の空を見つめていると、胸の奥が少しだけチクリと痛んだ。


(エリアリアさんたち……今頃、どうしているかな)

僕がいなくなって、少しは困ったかもしれない。


でも、彼女たちは間違いなく世界で一番強いパーティーだ。僕のような足手まといのサポーターがいなくなれば、もっと身軽に、もっと輝かしい冒険をしているはずだ。


きっと今頃、新しい優秀なサポーターを見つけて、迷宮の最深部で高らかに笑っているだろう。


「……僕も、負けないように頑張らないとね」

僕は小さく息を吐き、少しだけ寂しさを孕んだその思いを、潮風に乗せて空へと溶かした。


今はもう、僕にはこの子たちを守る役目があるのだ。


振り返ると、レンが目を覚まして「キュイ?」と不思議そうに僕を見上げていた。


「なんでもないよ、レン。さあ、そろそろおやつの時間にしようか。今日は、船長さんにもらった新鮮な果物で、特製のフルーツポンチを作るよ」

「おうっ! アニチャンのオヤツ!」

「シュルル、待ち遠しいのう」

僕の言葉に、モフモフたちと赤鬼がパッと顔を輝かせて集まってくる。


その温かくて無邪気な笑顔を見ていると、胸の奥の小さな痛みも、いつの間にか優しい温もりへと変わっていた。


遠く離れた異国で、泥に塗れながら自分を想って涙を流す彼女たちのことなど、知る由もなく。


お人好しな少年と規格外の魔物たちは、のんびりと、けれど確かな絆を育みながら、波の音とともに西の故郷へと近づいていくのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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