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「よわよわショボいポーター実は最強のスキル待ち〜追放されたので、なぜか女子パーティーに拾われ溺愛されています〜」  作者: 虹の箸
新しい旅立ち

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ダンジョン探検

また書き始めました、どうぞよろしくお願いします。

王都から馬車で半日の距離にある『翡翠の地下迷宮』


その第十五層に広がる鍾乳洞の中で、澄んだ剣戟の音が一度だけ響き、静寂が訪れた


「——よし。第十五層の階層主ボス、討伐完了よ」

エリアリアさんが剣を鞘に収めながら、短く息を吐く。


彼女の足元では、この階層の主であった巨大な魔石竜が、セレナさんの放った氷縛の魔術によって完全に動きを封じられ、リティの双剣によって急所を正確に貫かれていた。


力任せに吹き飛ばすのではなく、それぞれの役割を完璧にこなす、無駄のない洗練された連携。


ミランが展開する結界の中でその様子を見守っていた僕は、すぐさま準備に取り掛かった。

「皆様、お疲れ様です。少し冷える階層ですから、すぐに温かいものを用意しますね」

僕が声をかけると、張り詰めていた空気がふっと緩むのがわかった。


限定空間収納ワン・キューブ】を展開し、中から事前に準備しておいたテーブルと椅子、そして保温状態を完璧に維持したポットを取り出す。


この迷宮は階層を下るごとに気温が下がり、湿度が上がる。体力を削るには十分すぎる過酷な環境だが、僕のスキルの中は常に『一番良い状態』の時間が止まっている。


「ありがとう、アレン。あなたの淹れてくれるお茶の香りを嗅ぐと、迷宮にいることを忘れてしまいそうになるわ」


セレナさんが杖を置き、優雅な所作で椅子に腰を下ろした。

それに続くように、リティも「やったー、ご飯だ!」と少しだけ早足で駆け寄ってくる。


「ふふ、クラリス様から頂いた特級の茶葉ですから。今日は、王都のベーカリーで買っておいたライ麦パンと、熱々のシチューです」

「素晴らしいですわ。やはり迷宮探索とはいえ、お食事の質は士気に直結しますものね」


後方で周囲の安全を確認していたクラリス様も合流し、僕たちは薄暗い鍾乳洞の一角で、ささやかな食卓を囲んだ。


かつて僕がいた勇者パーティーでは、迷宮探索といえば「一気呵成」が基本だった。

休む間も与えられず、睡眠時間すら削って最深部を目指す強行軍。僕は荷物に埋もれながら、冷え切った硬い干し肉を齧り、いつ魔物に背後から襲われるかと怯えていた。


けれど、彼女たちの歩みは違う。

どんなに実力があっても決して慢心せず、一つひとつの階層を確実に攻略し、階層主を倒すたびにこうして十分な休息を取る。


「……ん、美味しい。冷えた体に沁み渡るわね」

シチューを口に運んだエリアリアさんが、心底ほっとしたように微笑んだ。

「アレンが武器のメンテナンスを完璧にしてくれているおかげで、刃こぼれ一つ気にせず剣を振れたわ。いつもありがとう」

「いえ、僕は皆さんのように戦えませんから。これくらいしかできませんし」

「それがどれだけ価値のあることか、アレンはまだ分かっていないみたいね」

セレナさんが、ティーカップを両手で包み込むように持ちながら目を細めた。


「迷宮の奥深くに進めば進むほど、冒険者は心身をすり減らしていく。でも、私たちは常に万全の状態で次の階層へ進めるわ。アレンが温度も、湿度も、私たちの心境すらも完璧に管理サポートしてくれているから」


「そうですよ。主神アレンの加護——いえ、アレン様の細やかなお気遣いがあればこそ、私の治癒魔術も温存できるのですから」


ミランが静かに微笑みながら、僕の分のお茶を注ぎ足してくれた。


過保護なまでに僕を気遣ってくれる彼女たちの言葉には、嘘も誇張もない、真っ直ぐな信頼が込められている。


その事実が、たまらなく嬉しくて、少しだけ気恥ずかしい。

「……ありがとうございます。でも、皆さんが僕を真ん中で守ってくれているから、僕は安心してシチューを温められるんですよ」


僕の言葉に、彼女たちは顔を見合わせ、やがて揃って小さく吹き出した。

「そうね。だから、アレンは安心して私たちの背中を見ていればいいわ」

エリアリアさんが立ち上がり、迷宮のさらに奥へと続く下り階段を見据えた。


食事を終え、温かな紅茶で一息ついた僕たちの体には、再び活力と魔力が満ちている。


「さて、次は第十六層。ここから先は魔物の毛色も変わるはずよ。油断せず、確実に進みましょう」

「了解。斥候(索敵)は私に任せてね」

「結界の強度は一段階引き上げますわ」

彼女たちがそれぞれの武器を手に取り、表情を冒険者のそれへと切り替える。


僕は使い終えた食器を【ワン・キューブ】へと素早く収納し、皆の背中を追うために一歩を踏み出した。


「アレン、足元が滑りやすくなっているから気をつけてね。私のマントの裾、掴んでいていいから」

「あ、大丈夫です。ちゃんと滑り止めの靴底に換装してきましたから」

「もう、アレンは準備が良すぎるんだから。たまには頼ってくれてもいいのよ?」

少しだけ残念そうに笑うエリアリアさんの隣に並び、僕は深く息を吸い込んだ。


冷たく湿った迷宮の空気も、今はもう恐ろしくない。

確かな足取りで一層ずつ、ゆっくりと、けれど確実に。

僕たちは連れ立って、未知の階層へと足を踏み入れた。


お読みいただきありがとうございました。

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次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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