その頃勇者達は…
その頃、アレンを理不尽に追放した勇者パーティーは、常にギスギスしていた。
「チィッ!! なんで剣がこんなに刃こぼれしてんだよ! あと!予備のポーションはどうした!」
新しく雇ったポーターを怒鳴りつける。ギルドから優秀と推薦されただけあり、アレンとは比べ物にならないほどのアイテム収納能力
を持ち、ほぼ無尽蔵にアイテムを持ち歩けるようになったが、その能力の高さゆえに取られる報酬も破格であり、その上街道での野営、武器のメンテナンス、食事の準備など全てオプション扱いで別途料金を請求される。
それは合わせると相当な額になり、下手をすると1日の稼ぎの半分近くになることもあった。抗議をしても契約だからの一点張りで、解雇するなら違約金も払ってもらうと一蹴される。
今まで通りの稼ぎを得るために、無理をして高難易度のダンジョンや魔の森に挑まざるを得ず、いかに勇者パーティーといえど徐々に
疲弊していった。
これまでアレンに雑用をすべてアレンに押し付けていたツケガここに来て顕在化してきたのだ。
経費節約のためテントも張れず、(新しいポーターはマジックテント[形は小さいが中は快適で広い]で悠々と休んでいる)日々の食事すら、オプションで頼んで用意してもらってもアレンの足元にも及ばない味で、勇者ゼロと魔法使いシャルは常にイライラしていた。
そんな彼らから少し離れた焚き火の影で、僧侶のミランは一人、大事そうに一本の『杖』を抱きしめていた。それはかつて、アレンが毎晩夜なべをして、彼女のためにピカピカに磨き上げてくれていた杖だった。
「……アレン……ああ、私のアレン……」
ミランの瞳は、聖職者らしからぬ暗く濁った執着に満ちていた。
彼女は、アレンを嫌ってなどいなかった。むしろ、その逆だ。優しくお人好しなアレンに誰よりも執着し、深く愛していた。ただし、その愛はひどく歪んでおり、彼を無能と罵り、徹底的に自尊心をへし折ることで、「私がいなければ生きていけない」ように依存させ、完全に自分のモノ(ペット)にするつもりだったのだ。
しかし、勇者ゼロがアレンを追放し、ギルドまで追放してしまったせいで、その計画は狂ってしまった。
「……ゼロのバカが勝手に追い出すから。でも、いいわ。今頃あの無能で愛しいアレンは、泣きながら泥水をすすっているはず。……絶対に探し出して、今度こそ私の足元に鎖で繋いで、一生可愛がってあげる……ふふっ、ふふふふっ……」
かつてのパーティーがゆっくりと破滅への道を歩み始めていることなど、辺境の迷宮で少女たちに囲まれるアレンは知る由もなかった。
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