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「よわよわショボいポーター実は最強のスキル待ち〜追放されたので、なぜか女子パーティーに拾われ溺愛されています〜」  作者: 虹の箸


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ホントは強いんだからねッ!

——アレンたちが宿でドタバタを繰り広げていた頃。

「はぁっ……! はぁっ……! 見たか、これが選ばれし勇者の力だァァッ!!」

「やった……! やったわゼロ! これで一発逆転よ!!」

僧侶のミランにまで見捨てられ、いよいよ後がなくなった勇者ゼロと魔法使いシャルは、起死回生を狙って高難度ダンジョンの最深部へと足を踏み入れていた。

なんだかんだ言っても腐っても勇者パーティー。アレンという絶対的なサポーターを失って疲弊してはいたものの、二人の本来の戦闘力は決して低くはない。ボロボロになりながらも、二人はついにダンジョンマスターである強大な魔物を討ち果たすことに成功したのだ。

魔物が消滅した跡には、眩い光を放つ金銀財宝の山と、禍々しくも美しい特大の『魔石』がドロップしていた。

「がはははっ! 見ろシャル、この宝の山を! これでギルドの借金も全額返済して、また豪遊できるぜ!」

「ええ! あの生意気な受付嬢や、私たちを見捨てたミランを見返してやるのよ!」

二人が歓喜の涙を流して宝の山に飛び込もうとした、その時だった。

「——素晴らしい手際でしたね。では、**『清算』**と参りましょう」

事務的な冷たい声と共に、後ろで悠々と戦いを傍観していたポーターの男が進み出た。

彼は分厚い帳簿を開き、インクの切れない魔法のペンを走らせる。

「これまでのポーションの前借り分、ならびにその利子。本日の『高難度ダンジョン特別同行オプション』、およびギルドへの借金の代理返済手数料……しめて、この宝の山の総額とピッタリ同額ですね。では、回収いたします」

シュババババッ!

ポーターが自身の持つ【アイテム収納能力よじげんポケット】を発動した瞬間、山のように積まれていた金貨や宝石、高価な武具の数々が、まるで掃除機に吸い込まれるように一瞬で彼の亜空間へと消え去った。

「なっ……!?」

「て、てめぇ! 何勝手に全部しまってんだ!! 少しは俺たちの取り分を残せ!」

ゼロが血走った目で胸ぐらを掴もうとするが、ポーターは涼しい顔で帳簿のサイン欄を突きつけた。

「契約書通りです。これでもまだ少し足りないくらいなのですが……ふむ」

ポーターは地面に一つだけ残された、特大の『魔石』を拾い上げた。そして、何かを確認するように目を細め、口元にほんのわずかな——酷薄な笑みを浮かべた。

「……お二人のこれまでの奮闘に免じて、せめてもの情けです。こちらの魔石だけは、特別にお返ししましょう。街で売れば、美味しいディナー代くらいにはなるかもしれませんよ」

「ちっ……! 当たり前だ! それよこせ!」

ゼロはポーターから魔石をひったくり、シャルと共に舌打ちをしながらダンジョンを後にした。

(ふふ……せいぜいお気をつけて。それが、持つ者に恐ろしい不運をもたらす『厄災の呪石』であることは、わざわざ教える義理もありませんからね)

ポーターは背を向けた二人に一礼すると、一足先に魔法のアイテムで街へと帰還していった。

——そして、帰路。

その『呪われた魔石』の効果は、瞬く間に勇者たちに襲いかかった。

「痛ぇっ!? なんでこんな平坦な道で転ぶんだよ!」

「きゃああっ! 上からスライムが降ってきた! ちょっと、なんで私ばっかり狙うのよ!」

何もない場所でゼロが顔面から泥水に突っ込めば、シャルは森の木々から落ちてきたスライムに全身をベトベトにされる。

さらに、突然彼らの頭上にだけ局地的なゲリラ豪雨が降り注ぎ、逃げ込んだ先の洞窟では運悪くクマの魔物の冬眠を邪魔してしまい、命からがら逃げ回るハメになった。

「ぜぇっ……はぁっ……な、なんでこんなに……悉くツイてねぇんだ……!」

数時間後。

街の冒険者ギルドに辿り着いた二人は、全身泥とスライムまみれで、服は引き裂かれ、もはや生きたゾンビのような悲惨な姿に成り果てていた。

それでも、ゼロは震える手で懐からあの『魔石』を取り出した。

「た、頼む……これを買い取ってくれ……これで、温かいメシを……」

カウンターにすがりつくゼロ。

しかし、その魔石を見たギルドの鑑定士は、顔を真っ青にして叫んだ。

「ひぃぃっ!? な、なんですかその禍々しい石は! それは強烈な不運を呼ぶ『厄災の呪石』じゃないですか!! そんなものギルドで買い取れるわけないでしょう、持ち込み禁止ですよ!!」

「な、なんだって……!?」

「早く神殿へ持っていって、呪いを解除してもらってください! ギルドの中に不運が蔓延したらどうしてくれるんですか!!」

塩を撒かれる勢いでギルドを追い出された二人は、泣きながら街の神殿へと駆け込んだ。

「た、頼みます神官様……この呪いを解いてくれ……!」

「ふむ。これはかなり強力な呪いですね。解除には、金貨50枚を奉納していただきます」

「ご、ごじゅう……!? そ、そんな金あるわけねぇだろ!」

「では、ギルドの借金口座に追加でツケておきますね。——大いなる光よ、この邪悪なる呪いを浄化したまえっ!」

神官が神聖な光を放つと、魔石から黒いモヤがフワリと抜け出し、消滅した。

禍々しい紫色を放っていた魔石は、その光を失い、ただの灰色の石へと変わった。

「はぁ、はぁ……よ、よし、呪いは解けたな」

ゼロはフラフラと立ち上がり、浄化された石を神官に見せた。

「な、なあ! 呪いが解けたなら、これは純粋な『特大の魔石』だろ!? 神殿で買い取ってくれよ! 金貨100枚……いや、80枚でいい!」

しかし、神官は呆れたようなため息をつき、その石を指差した。

「……あなた、目が腐っているのですか? 呪いの力が抜けたその石は、もはや魔力をほとんど内包していない『ただのデカい魔石』ですよ。買い取ったとしても、せいぜい銅貨3枚(パン1個分)ですね」

「……え?」

「呪い解除の借金、しっかり返済してくださいね。それではお気をつけて」

「あ……ああ……」

死に物狂いで高難度ダンジョンをクリアし、

宝の山はすべて腹黒いポーターに奪われ、

呪いのせいで散々な目に遭い、

残ったのは、パン1個分の価値しかない石っころと、さらに膨れ上がった莫大な借金だけ。

「あ……あひゅ……」

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 私の、私の輝かしいセレブ生活がぁぁぁぁぁっ!!」

街のど真ん中で。

ついに心が完全にへし折れた勇者ゼロは白目を剥いて泡を吹き、魔法使いシャルは発狂したように天を仰いで泣き叫んだのだった。


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