表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「よわよわショボいポーター実は最強のスキル待ち〜追放されたので、なぜか女子パーティーに拾われ溺愛されています〜」  作者: 虹の箸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/27

なんだねこれは

死の危険が常に付きまとう『深緑の迷宮』の深層。

しかし今日の僕たちは、かつてないほどの凄まじいハイペースで階層を駆け下りていた。

「オラァッ! アレンの愛の前にひれ伏しなさい、このブタ共ォォッ!!」

ドゴォォォンッ!!

迷宮の壁が揺れ、巨体を持つ屈強なミノタウロスが、ピンボールのように天井へと吹き飛ばされる。

それをやったのは、前衛の騎士……ではなく、後衛であるはずのヤンデレ僧侶・ミランだった。彼女は僕がかつてピカピカに磨き上げた『純銀の杖』をバットのように構え、圧倒的な物理暴力で魔物の群れを次々と粉砕していく。

「あ、あの、ミランさん! 杖がひしゃげてます! 僧侶なんだから回復魔法とか……!」

「アレンに危害を加える存在を『物理的に消滅させる』ことこそが、究極の予防回復です! さあアレン、私の勇姿をその目に焼き付けてください!」

ミランが返り血(※魔物の)を浴びながら恍惚とした笑みを浮かべる。

その異常な大活躍に、本来のメインアタッカーであるエリアリアさんが黙っているはずもなかった。

「くっ……! ぽっと出のバーサーカー僧侶に前衛を任せておけるか! アレン、私の方を見なさい! ふっ……シッ!」

エリアリアさんが白銀の剣を上段に構え、雷光のような鋭い踏み込みでオークの群れを一閃する。

「おおっ……! 次の昇段審査に向けて特訓していた、三本目と四本目の『かた』! 完璧な太刀筋ですね、エリアリアさん!」

僕が拍手喝采を送ると、彼女は「えへん」と嬉しそうに豊満な胸を反らした。

物理で殴る僧侶と、対抗心を燃やす戦乙女たち。

彼女たちが魔物を文字通りミンチにしていったおかげで、僕たちは無傷のまま、あっという間にボス部屋の手前——安全地帯セーフティゾーンへと到達してしまった。

「ふぅ……皆さん、お疲れ様です! 結界を張ったので、ここで少し休憩しましょう」

安全な小部屋に到着するや否や、僕は【限定空間収納ワン・キューブ】からマジックテントと調理器具、そして人数分のふかふかのクッションを手際よく取り出した。

「はぁ〜、生き返るぅ……アレン、お水ちょうだい!」

「はい、リティさん。冷やしておきましたよ」

「んぐんぐ……ぷはーっ! アレンの淹れたお水、世界一美味しい!」

斥候のリティが、僕にべったりと寄りかかりながら喉を鳴らす。

その横で、僕は素早く携帯用のコンロで火を熾し、皆の疲労を回復するための温かいハーブティーとお茶請けのクッキーを準備し始めた。

「さあ、皆さん。ボス戦の前にしっかり糖分を取って——」

「ああ、私のアレン……。相変わらず素晴らしい手際ですね」

背後から、ヌルリと蛇のようにミランの腕が僕の腰に巻きついた。

背中に柔らかいものが当たる感触と、首筋に吹きかけられる甘い吐息に、僕は思わず「ひゃっ」と変な声を上げてしまう。

「ミ、ミランさん! 準備中ですから離れて……っ」

「思い出すわね……」

ミランは僕の耳元で、わざと皆に聞こえるようなねっとりとした声で囁いた。

「かつて私がパーティーの備品の管理法を尋ねた時、…二人きりの密室で、2〜3時間みっちりと熱い『引き継ぎ』をしてくれたあの甘い夜を……♡」

「言い方が絶妙にいやらしいですけど、それただの事務的な業務引き継ぎですよね!?」

僕がツッコミを入れるが、その「2〜3時間の密室セッション」というワードは、他の3人の心に火をつけるには十分すぎた。

「ズルイ!!」

リティがバンッ! と立ち上がり、僕の右腕にガバッと抱きついた。

「過去の事務作業でマウント取らないでよ! 私なんか、いつもアレンに罠解除のサポートしてもらってるんだから! アレン、私疲れちゃった! ボス戦の前に、3時間たっぷり膝枕して!」

「リ、リティ! はしたないわよ! だいたいアレンは、私の剣の重心のブレをチェックする約束なんだから!」

エリアリアさんが顔を真っ赤にして僕の左腕を引っ張る。

「アレン! 休憩が終わったら、さっきの四本目の『形』の足さばき、じっくり見てちょうだい! 指導料として、私の膝枕を要求……じゃなくて、提供するわ!」

「指導する側が膝枕されるっておかしくないですか!?」

右からはリティ、左からはエリアリアさん、背後からはミラン。

僕の身体は、限界まで引っ張られるおもちゃのように悲鳴を上げていた。

「……ふふっ。相変わらず騒がしい野猿たちね。アレンが困っているじゃない」

その時、救世主のように魔女のセレナが近づいてきた。

「セ、セレナさん! 助けてくだ……」

「アレン。私、さっきの戦闘の反動で、なんだか胸のあたりが苦しいの……」

セレナはため息をつきながら、ローブの胸元をこれ見よがしにはだけさせ、深い谷間を僕の目の前に突き出してきた。

「ねえ、アレン。あなたのその優しい手で、直接『マッサージ(治療)』してくれないかしら? 魔法使いはデリケートだから、今すぐじゃないとダメよ?」

「「「一番ドサクサに紛れてタチが悪いわよ!!」」」

ミラン、エリアリア、リティの三人のツッコミが完全にハモる。

しかしセレナは涼しい顔で「あら、私は純粋に医療行為を求めているだけよ?」と僕の顔を胸元へ引き寄せようとしてくる。

「アレンは私のペットです! 離れなさい!」

「アレンは私たちの専属サポーターよ! 泥棒僧侶は引っ込んでなさい!」

「えーい、もう誰が一番アレンと密着できるか、勝負よ!」

ボフッ! ドガッ! バキィッ!

四人の美少女(+ヤンデレ)による、僕を巡る骨肉の争い。

飛び交うクッション、魔法の火花、そしてミランの物理杖。

せっかくの安全地帯だというのに、ボス部屋に入る前から、パーティーのHPとMPは別の意味でゴリゴリと削られていく。

「あ、あのー……お茶、冷めちゃいますよ……?」

狭いテントの隅っこで、僕は自作の『対物理衝撃用結界(ただの分厚い座布団)』を頭から被りながら、遠い目で呟いた。

ボスであるはずの凶悪な魔物すら、扉の向こうでこの大惨事ラブコメディに震え上がっているに違いない。

僕の平和で穏やかな雑用ライフが戻ってくる日は、果たして来るのだろうか……。

(まあ、前のパーティーで虐げられていた頃に比べれば、100万倍幸せなんだけどね)

そんなことを思いながら、僕は冷めかけたハーブティーを一口、静かにすすったのだった。


お読みいただきありがとうございました。

もし「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ページ下部にある【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】の評価を押して応援していただけると、今後の執筆の何よりの励みになります!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ