アレンの安眠
いつもお読みいただきありがとうございます。でも、気づいちゃったんです。
別にキース強くなくて良くね?って
でも、明るく楽しい作品だからホントだから!
その夜。
定宿にしている『木漏れ日亭』へと戻った僕は、重い足取りで自分の部屋のドアを開けた。
今日は強敵との戦闘(?)に加え、ヤンデレと過保護たちの激しい口論に挟まれ続け、精神のHPはとうにゼロだ。もう一歩も動けない。早く温かい布団に飛び込んで、泥のように眠りたかった。
フラフラとベッドに近づき、掛け布団をバサッとめくる。
「おかえりなさい、私のアレン♡ ご飯にする? お風呂にする? それとも……監・禁・さ・れ・る?」
「ギャアアアアアアアアッ!?」
僕は今日一番の悲鳴を上げて、部屋の入り口まで後ずさった。
なんと、僕のベッドの上には、布面積が極端に少ない、黒の透け透けネグリジェ姿のミランが、妖艶なポーズで横たわっていたのだ。
「み、ミミミランさん!? なんで僕の部屋に!? っていうかその格好!」
「ふふっ……今日のタロットの導きは『恋人』の正位置。私たちの魂が深く交わり、一つになるという星の暗示です。さあ、私にその身を委ねなさい……あなたのすべてを、骨の髄まで愛してあげますから……!」
ミランがネグリジェの肩紐をツーッとずらし、暗く濁った瞳で両手を広げて迫ってくる。
貞操の危機。いや、物理的な命の危機かもしれない。蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった僕の肩を、ミランの細く冷たい手が掴もうとした――その瞬間。
バァァァァァンッ!!
「そこまでよ、このド変態ストーカー僧侶ォォォォッ!!」
部屋のドアが蹴破られ、凄まじい剣幕のエリアリアさんが飛び込んできた。
彼女は寝巻き姿のまま、愛用の剣を**『上段の構え』**にピタリと据え、ミランに向けて鋭い殺気を放つ。剣の切っ先が全くブレない、完璧な重心移動だ。
「チッ、嗅ぎつけてきましたかメス豚騎士。せっかくアレンを私の愛で調教してあげようとしていたのに」
「誰がメス豚よ! アレンの貞操は、このリーダーである私が死守するわ!」
「リーダーだけじゃなくて、私たちもいるわよ!」
天井の梁から、斥候のリティがシュタッと舞い降りる。手にはなぜか、対人捕縛用のネットが握られていた。
さらに廊下からは、魔女のセレナが杖を構えて冷たく言い放つ。
「アレンの部屋の周囲に『対ストーカー用・侵入不可結界』を張っておいて正解だったわね。まさか窓の隙間から物理的に鍵を壊して侵入するとは恐れ入ったけれど」
「愛の力(物理)の前に、魔法など無力です。さあ、邪魔をするなら容赦しませんよ。あなたたちを血祭りにあげて、アレンと甘い夜を過ごすのです!」
ミランがどこからともなく取り出した『純銀の杖』を、鈍器のように構える。
対する戦乙女3人も、僕を背中にかばうようにして武器を構えた。
「させるか! リティ、セレナ! アレンを守るわよ!」
「了解!」
「今日こそその捻じ曲がった性根ごと叩き直してあげるわ!」
「ああ、アレン! 今すぐその邪魔者たちを排除して、あなたを優しく踏みつけてあげますからね!」
狭い宿屋の僕の部屋で、ネグリジェ姿のヤンデレ僧侶と、寝巻き姿の過保護な美少女3人による、一切の容赦がない乱戦が幕を開けた。
剣とネットと魔法と鈍器(杖)が飛び交い、部屋の壺や椅子が次々と粉砕されていく。
「あのー……皆さん。ここ、僕の部屋なんですけど……」
部屋の隅っこに避難した僕は、抱き枕を盾にしながら虚ろな目で呟いた。
どうやら今夜も、僕の安眠(と貞操)が守られるまでの道のりは、迷宮の下層よりも深く険しいらしい。
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