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夜長に読むための物語  作者: 千尋


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くくりの樹

 Eさんが通っていた高校の敷地には一本のクスノキが植えられていた。

 学校から遠く離れても目立つほどに大きな樹だった。隣接する体育館よりも高さがあって、一年を通しておだやかに葉を茂らせている。 

 ある意味で学校のシンボルだったとEさんは言う。

 「先生から聞いた話だと、あの高校が設立される前から植えられているそうです。県の天然記念物に指定されているんだとか」

 そんな大クスノキであったが、Eさんが二年の夏に体育館の改修工事が行われることになった。耐震化を踏まえた念入りな工事だった。

「それで資材の搬入に支障があるからということで、枝の一部を切り落とすことになったんです。もちろん古い木だから念入りに調べることになって――」

 その過程で奇妙なものが見つかった。一本の長い縄が、枝の高いところにくくられていたそうだ。

 いつ誰が結びつけたのかはわからない。くくりつけられた枝は相当に高く、少なくとも登らなければ手の届かない場所にあった。

 長年放置されて古びていたが、縄の端は、まるで何かをぶら下げるように地面に向かって垂れ下がっていたという。

「由来が分からないまま工事は進められました。縄も、枝と一緒に取り除かれたそうです」

 その後、体育館の工事は何事もなく終わりEさんは高校を卒業した。この件に関してなにか変わったことがあった、という話は今まで聞いていないそうだ。

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