ベッド
ある冬の夜のことだ。厚い布団にくるまって眠っていたKさんは、小さな物音で目を覚ました。
かりかり、かりかり。まるで何かが擦れ合っているようにも聞こえる。当時小学生だったKさんは、耳をそばだてた。
音はその後も続いていたが、しばらくするとぴたりと止んだ。
Kさんは思い切って布団を小さく持ち上げた。すぐ上には、兄が寝ている二段ベッドの上段がある。
Kさん達が使っていた二段ベッドは親戚に譲ってもらった古い物だ。特に上の段は脚が高く作られていて、毎日長い梯子を登り降りする必要がある。
なので自然と兄が上の段、まだ小さかったKさんが下の段を使うようになったという。
古い物だし、ひょっとしたら上の底板が割れて兄が落ちてくるんじゃないだろうか。
そう思ったらなんだか怖かった。目も覚めてしまったし、ひとまずトイレに行こうとKさんはベッドから抜け出した。
かりかり、かりかり。
また音がした。そう思った瞬間に、右の足首を誰かに掴まれた。
真っ白い腕がベッドの下から現れて、Kさんの足を握っていた。Kさんは叫び声をあげた。
血の気のない爪は長く伸びていて、先程までの音は、《《これ》》がベッドを引っ掻いていたのだとようやく分かった。
すぐに両親が駆けつける気配があった。腕はぱっとKさんの足を離すと、滑るようにベッドの下に潜っていった。
Kさんは泣きながらベッドの下に誰かいる、と訴えた。もちろんそこには誰もなく、綿埃がいくらか転がっているだけだった。
Kさんは兄に頼み込んでベッドの上下を替わってもらった。
不思議なもので、替わった後はカリカリという音も聞こえなくなった、という。




