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親バレ、注意報発令
朝食。
母がキッチンで振り返り、固まる。
「……春斗?」
「あ、あのね、今日は……」
言えない。
“今日は女です”なんて。
母は目を細める。
「声、風邪? 高くなる風邪声なんてあったけ。
ほっそりと華奢になった気がするわ。
……うーん、なんか、雰囲気が違うわね」
「あっ、急いでいるからもう行くね」
慌てて玄関を飛び出す春斗。
大学の近くの駅のトイレ、個室へ。
羽織っていたメンズのコートを脱ぐと鞄に押し込む。
コートの下からは、勝手に借りた母のワンピース。
ワンピースの下に履いていたジーンズを脱ぐと
脚がスース―する。女の子の感覚だ。
鞄から取り出したヒールの靴に履き替える。
束ねていた髪をほどくと、鏡をのぞいてリップクリーム。
「よしっ、これで女の子。
僕は…じゃない、わたしは…春菜。春菜よ」
ドキドキを抑えながら、校舎へ向かう。
カツン~カツン~と、
コンクリートを慣れないヒールの音がやけに高く聞こえた。




