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なぜか未来の記憶を得たイギリス首相は、自らが作り出す悲劇を回避して、第二次世界大戦に臨もうとする  作者: よぎそーと


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9 利権と覇権への対処 2

「そこまで利権を確保したいなら、自腹で防衛をしろ」

 利権についてはこう突っぱねた。

 これらは植民地に確保してる資源や農産物、加工工場の利権を保とうとしてる。

 その為に国軍を使って防衛をさせようとしてる。

 そんなこと許すわけにはいかない。



「我が国が守るのは、寄港地と交易港。

 この周辺の取引市場と居留地のみ。

 そこから先は範疇外」

 これがイギリスが国力で守らねばならない範囲である。

 それ以外は対処しようがない。



 これは国力と展開できる範囲の限界だ。

 これ以上どうにもならない。



 そもそもとして、イギリスが欲しいのは、海を仲介とした貿易。

 各地の資源を手に入れる事ができる場所。

 そこに市場が欲しいだけ。

 極論すれば、これ以外はどうでもよい。



 なにより、治安を含めた統治は現地民がやる事である。

 イギリスが介入してるのがそもそもおかしい。



 それがあらわれてるのだろう。

 植民地各地での抵抗運動や武装蜂起が頻発している。

 これらの対処に軍を動員するのも限界がきていた。



 だからこその植民地放棄である。

 本来あるべき姿にかえす。

 そこにいる者達の統治に任せる。

 そうしていくしかない。

 今、この瞬間から。



 でなければ、統治のために莫大な金を投じる事になる。

 軍を動かし、多大な血を流す事になる。

 それだけの価値があるのかというと、そんなものはない。

 無駄な出費と出血にしかならない。



「せいぜい、各国に駐留する外交官の救出。

 これが限界だ。

 義和団事件のように」

 かつてイギリスも巻きこまれた中国での、当時は清だった国でおこった事件。

 この時のように、外交官は救出する。

 港から外に出るにしても、ここが限界だ。



「それ以外の地域にいる者の安全は、現地の警察と軍にまかせる。

 我らにできる事ではない。

 また、するべきではない。

 民族自決の観点からな」

 チェンバレンはこういって全てを突っぱねた。



 こうなると、各地の資産をどうするかという問題になる。

 農地や鉱山などの利権。

 これを持つ者にとっては死活問題になる。

 なのだが。



 元をたどれば、それは奪った土地である。

 公正な取引といっても、イギリス国内での事。

 それを失うとて、仕方ない事であろう。



 それにだ。

 こうした資源については、これまでに既に利益をあげている。

 初期投資も回収しているものがほとんどだ。

 これからの利益が無くなるのはともかく、これまでの経営で利益は出ている。

 それらの為にイギリス政府が血を流す必要があるのか?



 だが、さすがに無料で捨てろというのも問題である。

 なので、チェンバレンは多少の妥協案を出す。



「ここでアメリカなり日本に資産を売却してはどうか」

 まず、これが一つ。

 保有する資産の売却まで制限してるわけではない。

 これらを適切な価格で買うという者達との取引を邪魔するつもりはない。



「あるいは、現地の者達に売り払うか」

 これも手段の一つである。

 相手は他国の者である必要は無い。

 資産のある国や地域の者達に売り払ってもよい。

 ただし、これは現地の者達の反感を買うだろう。

「もともと、我々の土地だった。

 それを金を払って買い取れとはどういう事だ!」

 こうなるのがオチだ。

 だからこそ、現地で独立運動や反イギリス運動が起こってるのだから。



「それか、政府でこれらを買い取る。

 ただし、相場の4割で」

 これが実質的な第二案となる。



 資産を外国に売却したいならそれでいい。

 だが、買い手が付かなかったり、どうしても外国に売りたくないという者もいるだろう。

 そういう者にはイギリス政府が買い取る。

 ただし、値段は安くなる。



 資産という利権の保有者は考えさせられる事になる。

 買い手が付けば良いが、もし駄目だったらどうするか。

 独立運動などで破壊されるか、奪われるか。

 はたまた労働者である現地民のサボり、仕事の放棄に悩まされるか。



 それならば4割の値段で売っても良いのでは?

 こういう考えも出て来る。

 問題は、どちらが得かになる。



 資産を保有して、多大な出費を出しながら経営を続けるか。

 ここですっぱり諦めて、資産を売りに出し、資金を回収して終わらせるか。



「それなら……」

 利権を持つ者達は決断していく。

 大半は外国への売却へと向かう。

 まだ買い手がいるうちにと。



 そうでない者達は4割の値段で政府に売却していく。

 安くはなるが資金を、現金を得られるとして。



 そして、これはごく少数になったが。

 資産を保有し、今後も現地での経営を続けていく事を選ぶ者もいた。

 危険は大きいが、手にした者を失いたくないのだろう。

 その気持ちをくんで、チェンバレンはその意思を尊重した。

 ただし、決して助けにはいかないと念を押しもした。



 そして、さらに少ない例外的な者達もいる。

 これらは売りに出された資源を買いあさり、現地における資産を増やした。

 政府の意向を聞いてなお。

 それもそれで選択の一つである。

 この先どうなるかはわからないが、チェンバレンはそれも了承した。

 当然ながら、政府として対応も救助もしないと告げて。



 利権の方についてはこうして話がついていった。

 全員が納得したわけではない。

 だが、現状を理解はした。

 その上で多くが様々な選択をしていく。

 最終的にその結果を背負う事だけは了承して。



 これで終われば良いが、そうもいかない。

 領土や軍事力といった覇権。

 これらとも話をつけねばならないのだから。

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