5 大臣達とのお話あい 3
チェンバレンが持ってきた提案。
これに労働担当大臣と財務大臣は何度も目を通した。
「確かにこれなら……」
「なんとかなるかもしれん」
数字を読み、計算し、出費と成果を考える。
やることで得られる成果と、全てが出来上がったあとの状態を。
大規模な工事になる。
下水にしろ、道路にしろ、鉄道にしろ。
これらを全て実行するなら莫大な予算が必要になる。
多くの労働者が必要になる。
これらを動かせるなら、とてつもなく大きな効果が期待できる。
この時期ならば特に。
世界的な不況のまっただ中である。
イギリスでも失業問題が大きくなっていた。
無職が増え、収入がなくなり、税収も落ちていた。
何とかしようと政府も考えていたが、目立って大きな効果はなかった。
そこにチェンバレンの提案である。
まず、大量の労働力が必要になる。
これには失業者を雇うことで対応できる。
人員確保に問題は無い。
これらに賃金を払うことで、わずかながら税収の確保も出来る。
支払った金から改修できるのは税率の分だけ。
この頃のイギリスの税負担は2割あまりである。
税収など期待は出来ない。
これらが衣食住に流れていっても、得られる税収はやはりさほど大きくはならない。
だが、今まで出来なかったことが出来る。
古くなった下水道を作りなおせる。
雑然とした道を整理できる。
路上にいる電車を高架にあげて分離できる。
これらが成し遂げられたらどうなるか?
経済における問題の多くが消える。
ロンドンに限った事ではないが、この時代の多くの都市では道の狭さが問題だった。
以前に比べて自動車を使う者が増えている。
渋滞はいつでも当たり前に発生していた。
これらが無くなる。
それだけで無駄な損失が減る。
渋滞が消えるだけでも大きな利益だ。
物の行き来が円滑になるのだから。
加えて、下水道の整備も出来る。
町の拡大に必要な基盤が出来る。
コレに加えてチェンバレンは下水の処理施設の建設も提案している。
そのまま垂れ流すのではない。
可能な限り浄化した状態で川に戻す。
テムズ川の汚染を減らし、病気の原因を少しでも減らすために。
「現代科学の挑戦でもある」
1930年代の科学である。
出来ることは限られてる。
だが、その中でもやれる事をやる。
それ以上は求めていなかった。
とはいえ、こうして実際に施設を作って運用する事で、情報を得られる。
これが科学の発展に貢献する可能性もある。
どこまで出来るかは分からないが、チェンバレンはこれを期待していた。
だから労働担当の大臣も財務大臣も前向きになっていた。
これらを実施すれば、当面の失業対策になる。
また、その後の経済発展や回復の足がかりになる。
「だが……」
「予算が……」
ここで問題にぶつかる。
やれば効果があるのは分かる。
しかし、先立つものがない。
今のイギリスは広大な帝国を維持するために多大な出費を強いられている。
都市の再建予算を捻出出来ない。
「それについては────」
当然、チェンバレンも分かっている。
だから対策も用意していた。
「皆さんの協力をもらえればどうにかなるかと」
「え?」
「まさか!」
2人の大臣が驚く。
「いったいどうやって?」
「魔法でも使うのか?」
「まあ、そうなりますかな」
すさすがにチェンバレンも苦笑いを浮かべる。
ここまではどうにかなった。
だが、ここからはさすがに骨が折れる。
そう感じるからだ。
「陸軍と海軍。
それと植民地。
これらを説得しなければなりませんから」
さすがに荷が重いというものである。




