3 大臣達とのお話あい 1
「下水工事をしたい」
「はあ」
話を振られた土木建設担当大臣は困惑した。
「それは、大事な事でしょうが」
「その通り、大事だ」
チェンバレンは肯く。
「下水が川を汚染して病気が蔓延している。
これを防がねばならない」
実際、公害はひどい状況だった。
霧の都といわれるロンドンである。
その正体は工場から吐き出される煤煙。
有害な煙だ。
おかげで空はくもりっぱなし。
空がこれなのである。
大地をつたう水、川の流れも当然ながら汚れている。
それに人口増加、地方から流れ込んでくる人によって下水の能力も限界が来ている。
保健大臣としてはこれらを放置するわけにはいかなかった。
健康の維持には、快適な環境が必要。
それを少しでも取り戻さねばならない。
「だから我々に?」
「その通りだ。
古い下水を掘り返さねばならない。
どうしても君の協力がいる」
その通りである。
保健衛生を推進するには、医者や薬を用意するだけでは終われない。
病気の発生原因を一つ一つ潰して行かねばならない。
下水工事もこの一つだ。
必然的に、大がかりな工事が必要になる。
簡単な工事ではない。
どうしても大がかりになる。
埋めてあるものを掘り起こすのだから。
まして主要都市に施すのだ。
莫大な予算が必要になる。
多大な労働量が必要になる。
役所の担当部署を大量動員しなくてはならない。
だからまずは土木建設担当の大臣に話をつけにきた。
ここで協力が得られないなら先に進めない。
「それにだ」
「それに?」
チェンバレンはたたみかける。
「今、主要都市の道路は狭い。
これをどうにか改善しなくてはならない」
「それは、そうですが」
「ならばだ。
下水を掘り返すついでに、道の拡張もしてしまおう。
今の道は狭い」
「………… !」
この時代の先進国の抱える問題だった。
自動車に鉄道などが出現したことで、移動は楽になった……はずだった。
しかし、交通量の増大に道の広さが対応できなくなっていた。
これをどうやって整理するかが悩みの種になっている。
「それを下水工事と一緒にやってしまおう」
「それは、確かに効率的ですな」
「予算もお互いに出し合える」
「それも、願ったり叶ったりです」
「というわけで協力をお願いできないかな」
「……そういう事ならば」
土木建設担当として、断る理由がない。
「しかし、我々だけでどうにかなりますかな」
問題はここでは終わらない。
保険担当のチェンバレンと土木建設担当の大臣。
2人だけ、2つの大臣だけ他が動くかどうか。
「まあ、それはこれから頑張ってみる」
チェンバレンも確約はできない。
だが、手は打っていた。
「運輸担当と財務担当の大臣と話もしてみる」
チェンバレンは既にこれらの大臣との会談も取り付けていた。




