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なぜか未来の記憶を得たイギリス首相は、自らが作り出す悲劇を回避して、第二次世界大戦に臨もうとする  作者: よぎそーと


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18 新兵器対談 3

「まず、戦艦ですが。

 これは半分は稼働を停止させる。

 まずはこうするとして」

 一番の金食い虫を停止させる。

 これだけで莫大な予算が減る。



「従来の戦闘艦艇も3割を稼働停止にさせる。

 これらは旧式艦艇をあてる。

 まあ、大半が旧式なので、何を停止させてもかまわないのですが」

 言いながらチャーチルは苦笑する。

 ここまで我が軍が酷いという事をあらためて理解する事になったために。



「加えて、余ることになる乗員を再編成。

 除隊したい者を優先的に除隊。

 残った者を残存艦艇に割り振る」

 手短にするべき事をまとめる。

「ここまでは提案通り。

 まあ、再確認ですな。

 大丈夫、ここまでは何一つ問題なく遂行できます」

「つまり、ここからが問題だと」

「そうなってしまいます、嘆かわしい事に」



 実際、酷い有様である。

 ほぼ全てが旧式艦艇という現状。

 これをどうやって再編するのか。

 チャーチルとて頭の痛い事だった。

 だが、ここもチェンバレンの提案が活きてくる。



「かねてより提案されていた、小型の哨戒艦。

 これを旧型艦艇を作り直して確保していきます」

「提案という程では無いだろう。

 旧型の艦艇を再利用できないかと言っただけだぞ」

「それこそが妙案で名案なのです」

 チャーチルにとって、それは意表を突く提案だった。



 旧型艦艇の再利用。

 普通に考えたら無駄の局地である。

 なにせ、性能の劣る艦艇を使い続けるのだから。

 効率が悪くて仕方ない。

 だが、チェンバレンの提案で大きかったのは、次の一言があってからだ。



「いっそ、エンジンから何かから何までつみなおす。

 大胆な考えだ。

 だが、これが思った以上に画期的でした」

 かつての発言をチャーチルは繰り返した。

「そこまで?

 上手く再利用できればいいくらいに思っていただけだが」

「ええ、とてつもなく大きな利点がありました。

 これは俺のところに来てる者達の意見にもよるのですが」

 自分の人脈と、彼らの手柄を示しながら言葉は続く。



「まず、船体だけを利用して、中身をそっくり入れ替える。

 手間も金もかかりますが、新造艦を作るより遙かに安く作れる。

 おまけに、早く建造も終わる。

 エンジンや武装、その他必要な機器を入れ換えるのは手間ですが」

「それでも、早く出来上がって、安く作れると?」

「その通り」

 言いながら試算表を出す。



 それは集大成だった。

 チャーチルのところに集まる者達の。

 様々な分野の人間が集まり、持てる知識や技術、智慧が詰め込まれている。

 その結果が数字としてあらわれてる。



 今回のものは、艦艇の改造費用と期間だった。

 新たな艦艇を作る場合と比較されている。

 それを見てチェンバレンも驚く。



「これは凄い……」

 小型艦艇についてではあるが、予算も期間も半分といった結果になっている。

 個々の違いは出て来るだろう。

 しかし、全体として見れば、大幅な節約になる。



「まずは駆逐艦を60隻。

 これを哨戒艦に改造していきます」

 武装は大幅に軽量化される。

 魚雷や爆雷という目立つ兵器はなくなる。

 主砲も小型のものになる。

 エンジンも出力がおさえられる。

 だが、十分な能力になる。



「主砲は10センチ長砲身。

 砲弾は小さくなりますが、遠距離まで飛ぶようになります。

 それと、エンジンはディーゼルを使います。

 速度は落ちますが、航続距離は伸びます」

「なるほど……といってもな。

 詳しいことはわからないからなんとも言えないが。

 要は効率良くなるということか」

「その理解で問題ありません」



 軍事について、そして技術についてもチェンバレンは詳しいわけではない。

 なので詳細を言われてもわからない事が多い。

 だが、それが良いというなら素直に信じる事にした。



「あとは機銃をつみこみます。

 これは飛行機や小型のボートを相手にする為ですな。

 海賊や密漁船相手ならこれで十分です。

 加えて、照明と拡声器。

 他にも細々とした装備を」

「そのあたりは任せる。

 詳しくないからな。

 専門家に任せた方がいいだろう」

「ならばご期待に応えましょう」

「たのむ」

 チェンバレンは相手を信じる事にした。

 でなければ何も始まらない。



「これで当面必要な警備艦艇を確保するつもりです」

「なるほど。

 だが、それだけでは問題があるのだろう?」

「はい。

 必要な戦闘艦艇が確保できなくなります」

 警備などに使う哨戒艦。

 これは駆逐艦を改造する。

 なので、戦争に使う艦艇は減る事になる。



「なので、新造艦はどうしても必要になります」

「それは仕方ないだろう。

 だが、どのようなものをつくるのだ?」

「条約の範囲で作れるものを。

 排水量の上限が厳しいですが」

 言いながら駆逐艦の案を出していく。



 提案されてるのは比較的簡素なものだった。

 基本的にそれほど大きくは無い。

 武装も控えめだ。



 排水量は1400トン余り。

 全長は100メートル。

 武装は、10センチ長砲身を二つによる砲塔を2つ。

 魚雷発射管は1つ。

 爆雷投射器を3つ。

 そして機銃を6つ。

 今までの駆逐艦より武装をまとめたり減らしたりしている。



「主砲は哨戒艦と同じものを使います。

 機銃も。

 魚雷も発射管を減らし、爆雷投射器も一種類にしました」

「というと、今まではこれより多かったのかね?」

「ええ。

 そのせいでどうしても体が大きくなってました」

「それを縮めたのか。

 いや、詳しくはわからないが凄いのではないか?」

「まあ、前例がありますから。

 かつての同盟国の艦艇という」

 それでも凄いことは変わらない。



「これで当面必要な駆逐艦も確保します。

 艦艇の改造と平行して建造させたいところです。

 とはいえ、哨戒艦への改造が優先になります」

「そうした方が効率がいいという事かな?」

「はい。

 まず、旧式の艦艇を削る。

 これが先にやらないと、いつまでも予算が減りませんから」

 今ある艦艇に新しいのをつぎ込んだら必要経費が増える。

 だから、今ある艦艇を交換していく形をとる。

 これで予算の増加をおさえる。



「それに、新造艦となると、実際に使えるか試験をしないといけません。

 なので、すぐに量産とはいきません」

「なるほど。

 ならば順番はまかせる」

 出来るだけ総数の増加をおさえる、予算をおさえる。

 これに異論は無い。



「それに、改造によって得られる知見もあるでしょう。

 それを出来るだけ盛り込みたい。

 なので、新造艦は出来るだけ後回しにしたい。

 手遅れになるほど遅くはならない程度に」

「賛成だ。

 となると、新造艦というのはいつ頃出来上がる?」

「3年は見てもらえればと」

「それは助かる」

 この時間はチェンバレンにとってもありがたいものだった。



 これから町を作り替えていく。

 これらが終わるまでに3年かかる。

 それまでさらなる予算増加が無いのはありがたい。

 また、町の改造による効果も、建設が終わるまで出てこない。

 なので、3年間の猶予はありがたかった。



「あと、護衛艦も一緒に作ってしまおうと思います。

 哨戒艦も。

 これは、駆逐艦を元に作る事になります」

 チャーチルは今後の計画を更に提示していく。



「これらは駆逐艦の武装を外し、エンジンをディーゼルにしたものになります。

 なので、建造の手間を大幅に減らせます」

 基本的な船体は同じ。

 使う艦載砲も同じ。

 ただ、他の武装が違うだけ。

 なので、新たな設計図を用意する必要がない。

 別々の組み立て器具を用意する必要もない。

 これだけで予算も手間も時間も効率的に省略できる。



「護衛艦は、主砲と機銃と爆雷を搭載してる。

 外すのは魚雷だけ。

 これだけでも大幅に余裕ができます。

 哨戒艦は主砲と機銃だけ。

 魚雷に続いて爆雷も外します。

 あわせて、必要な人員も削減できます。

 必要な機器や器具も」

 要は武装を減らすだけである。

 だが、それだけでも効果は大きい。



「省いた分だけ余裕ができます。

 金も時間も省けます。

 それでいて、Uボートを防ぐ事ができます」

 大戦において苦労した部分である。

 投入された新兵器の潜水艦。

 これを撃退するための艦艇は必要不可欠だった。

 それを新たに用意しようとしている。



「駆逐艦ほどの戦力にはなりません。

 ですが、輸送路を守ることはできます」

「それらを最終的にどれくらい作る予定になる?」

「おおよそですが。

 駆逐艦は既にある分も含めて50隻。

 護衛艦が50隻。

 哨戒艦が、既にある分とあわせて70隻」

「それで足りるのかね?」

「計算上は足りるはずです」

 何にしても今の段階では確定された答えは出せない。

 それでも、今の状況よりはマシになるはず。



「小型艦艇はこれでまかなう予定です。

 これなら戦艦や巡洋艦を減らしても、普段の警戒に問題は無いはず」

「戦争になったら?」

「そこは上手く動かすしか無いでしょう。

 ただ、偵察を多く出せるので、どこに何を出すかを決めるのも簡単になるはずです」

「目と耳が増えるという事か」

 それは確かに重要な事だ。

 どこに何があるかわからないのでは、どんな優れた戦艦も動かしようがない。



 今のイギリス海軍にないものがチャーチルの提案にはあった。

 目と耳、敵を発見する能力。

 それを海軍はようやく手に入れようとしている。

 直接的な攻撃力は減る。

 だが、それ以上の戦力をイギリス海軍は手に入れる。



「それと、他の艦艇ですが──」

「聞かせてくれ」

 続く海軍案の続きをチェンバレンは求めた。

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