17 新兵器対談 2
「これを」
用意しておいた書類をチャーチルは渡す。
兵器の一覧だ。
旧型がどれほどあるのかをある程度まとめてある。
それに目を通してチェンバレンは大きなため息を吐いた。
書いてある内容が事実なら、軍の内情は思った以上にひどい事になる。
そして、チャーチルが正直に事実を伝えてるという事も事実だろうと思う。
「なるほど。
簡単にはいかないな」
「はい、問題はあまりにも大きくなってしまいました」
チャーチルの言葉には自責の念もにじんでる。
「元海軍大臣としては、ふがいない限りです」
海軍大臣をしていた事もあり、チャーチルも海軍の実態がひどいものは知っていた。
しかし、改善しようにもどうにもならかった。
海軍軍縮条約が理由だ。
第一次世界大戦後に結ばれた条約。
これにより海軍の保有艦艇に制限がかけられた。
これ自体はしかたない事ではある。
戦艦の建造競争のような状態に世界は陥っていた。
この負担が大きすぎて、各国の財政が悲鳴をあげはじめた。
だから戦艦の保有に制限をかけていった。
なのだが。
これにより戦艦を新たに作ることが出来なくなった。
だから軍縮になるのだが。
この為、戦力確保のために旧式の戦艦も数に入れるしかなくなった。
おかげで、数は多いが、半分は使い物にならないという状態だ。
そして、そんな戦艦を維持するために莫大な金が費やされる。
しわ寄せは他の艦艇に向かう。
少ない予算では新型を建造する事も出来ない。
やむなく旧型を使い続ける事になる。
おかげでイギリス海軍は、旧型がほとんどの戦えない艦艇ばかりとなっている。
海賊やゲリラといったろくな武装もしてない連中が相手ならよい。
だが、国家同士の戦争になったら、まず負けてしまう。
数で押し切る事も出来るだろうが、この場合は損害が大きくなるだろう。
「どうにかせねばとは思ったのですが。
しかし、何も思いつきませんでした」
「仕方ない事だったのだろう。
君を責める気にはなれないよ」
チェンバレンとしても必要以上に責め立てるつもりはない。
ただ、どうにかならなかったのかという思いだけは引きずってしまう。
「だからこそ、大臣の案には驚いたのです。
なるほど、こういう方法があったのかと」
「それこそ弥縫策というものだ。
その場しのぎでしかないよ」
「そのその場しのぎに、俺はすがるしかないのです」
チェンバレンが以前持ってきてくれた提案書。
それを手に取り、チャーチルは目を向ける。
「これこそが、起死回生の手段になるでしょう」
そこに書いてあるのは、確かに弥縫策といえるだろう。
だが、現状を救うには十分な内容になっている。
「旧式戦艦の廃棄。
旧型艦艇の縮小更新。
そして、小型警備艦の増加。
これならばどうにかなるでしょう」
大型艦艇を減らし、小型艦艇を増やす。
そして、軽武装だが維持費が安い小型艦艇で普段の警備活動や哨戒を行う。
予算をおさえつつ、最低限の戦力を維持する。
他に方法はないだろう。
「だが、何を減らし、何を増やすか。
あらためて言うが、これが分からない。
だから君の意見を聞きたい」
「もちろんです。
知りうる限りの提案はさせていただきます」
兵器についての話し合いが始まった。




