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なぜか未来の記憶を得たイギリス首相は、自らが作り出す悲劇を回避して、第二次世界大戦に臨もうとする  作者: よぎそーと


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15 最終的な決定権

 向かった先で待っていた者はチェンバレンの提案に様々な思考を思いめぐらせた。

 決して良い感情だけではない。

 むしろ無念さと残念さを顔ににじませている。

「だが、仕方ないのだな」

 首相、ではなく。

 首謀者のチェンバレンの方に尋ねる。

「はい」

 臆することのない応えが返った。



「そうか」

 その声に責任者はため息を漏らした。

 広大となった王国の、今は皇帝ですらある男が。

 弱気を見せてはならない。 

 常に堂々たれ。

 そんな教えを忘れて。



「しかし、余の代でこうしてしまうとは」

「大変申し訳ありません」

「言うな。

 分かっているのだ、こうせねばならないと」

 それでも辛いのである。

 先祖代々、どうにか国を保ち、そしてこれだけ広大になった。

 なのに、その偉業を自分が潰してしまうのが。



 とはいえ。

 そうせねばならないのも分かっている。

 広大な版図を持った国は必ず滅びる。

 アレクサンダー大王からの法則だ。

 拡大した国は、自らの重さによって押しつぶされる。

 かのチンギス・ハーンですらそうだった。

 イギリスが例外でいられるわけがない。



「それでも、7つの海はどうにか確保したい。

 そうは思っています」

「できるのか?」

「お約束は出来ません。

 何がどうなるのかは誰にも分からぬ事ですか」

「確かにそうだな」

「仮に出来たとしてもです。

 今とは違う形になるでしょう」

「それでも、我が王国は海の覇者でいられるのか?」

「覇者……ではないでしょう」

「ふむ……」



 チェンバレンの言葉に考え込む。

 イギリスの生命線である海。

 これをどうにか保ちたい。

 だが、それすらも難しくなっているという。

 それはそうなのだろうが。

 しかし、別の形というのはどういう事なのか?

「謎かけのようだな」

「そのつもりはないのですが…………。

 説明が足りず申し訳ありません」

「よい。

 そなたにはそなたの考えがあるのだろう」

 いいながら書類に署名を記す。

 その紙を首相に手渡す。



「余はそれを信じよう。

 存分にやってくれたまえ」

「微力ではありますが全身全霊であたらせていただきます」

「頼むぞ」

 チェンバレンにそう言うと、首相にむき直す。



「首相。

 大変だろうが彼の力になってくれ。

 彼の権限が及ばない範囲も出てくる。

 その時は、君が助けてやってくれ」

「御意にございます」



 最終承認はおりた。

 こうしてチェンバレンは己の策を実行する機会を得た。

 これで物事を始める事が出来る。



 だが、始める機会を得ただけだ。

 結果がどうなるかは分からない。

 分からないがやるしかなかった。

 頭に浮かんだ悲惨な未来を避けるために。



「チェンバレン」

 最高責任者の部屋を辞そうとしたその時。

 呼び止められて振り返る。

「頼んだぞ、チェンバレン。

 重ねて頼む。

 くどいとは思うが」

「────全身全霊をもって」

 己の全てをかけて事にあたる。

 そう返答をしてチェンバレンは首相と共に立ち去った。



 2人が部屋を出たあと。

 それでも扉を見つめている。

 自分用に渡された書類を手にしながら。

 そこに書かれていたこれからに思いをはせる。 できるのか、と思う。

 そして、出来たとしてこれで良かったのか、とも。

 しかしやるしかないのは分かっていた。

 この国の全てを預かる身である。

 それが必要なことも理解はしていた。



 それでもわだかまりというか、失うであろう様々な事を思うとやりきれない。

 ここに至るまでに、イギリスも多大な労力をつやしてきた。

 金も、資源も、そして血も。

 そうして築き上げた全てを捨てようというのだ。

「申し訳がたたんな」

 ご先祖様に。

 ご先祖様達に従ってくれた者達に。



 それでも、やるしかない。

 そうと分かってしまえるから署名をした。

 成功するかどうかは分からないけども。

 今は信じて。

 そして、全てが駄目になった時には責任をとる事を覚悟して。

 これからのイギリスの行く先が、せめて幸せなものである事を願った。



 ただ、チェンバレンの策を信じて。

 首相をも超える権限を持つ最高責任者として。

 それが彼の決断だった。



 ────イギリス国王ジョージ5世の。




気付いた分だけ誤字などは修正した。


その他、読んでて気づいた部分は誤字報告を送ってくれると助かる。

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