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なぜか未来の記憶を得たイギリス首相は、自らが作り出す悲劇を回避して、第二次世界大戦に臨もうとする  作者: よぎそーと


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13 利権と覇権への対処 6

 陸軍も世界各地に配属するために人を確保していた。

 強制的にでも。

 これも解消しなければならない。

 その為にも各地から兵力を回収し、除隊したい者を民間に帰してあげねばならなかった。



 何せ、実戦部隊の大半が海外にいる。

 本国には4万人。

 司令部や後方の支援部隊を含めても7万人か8万人。

 これでは本国の防衛もままならない。

 即座に戦争が発生する事はないにしても、何かあった場合の動ける部隊がないのは困る。



 装備も貧弱だ。

 不況のせいもあるが、海軍に予算を割いてしまってるせいでもある。

 膨大な海軍を維持する負担は大きい。

 これが政府予算の中でも重荷になってる。

 そのしわ寄せは陸軍にも向かう。



 結果として陸軍はかなり割を食っている。

 更新したい武器はあるのに、それが調達できない。

 世界大戦の頃と装備に大きな違いはない。

 これでは戦力にならない。



 これ以外にも問題は多々あるだろう。

 全てを改善せねばならない。

 その為の予算を捻出する必要がある。

 だからこそ海外駐留から引き上げる必要がある。

 外国に派遣するだけでも金がかかるのだから。



 また、海軍でもそうだったように、希望者は民間人に戻さねばならない。

 やりたくもない仕事をやらせるのは効率が悪い。

 命がけの仕事になるのならなおさらだ。



 海外に駐留する部隊の人間確保のために、強引な手段をとってる可能性もある。

 ならば、兵隊をやらされていた者達は少しでも早く民間に戻すべきである。



 徴兵制度そのものも例外では無い。

 これこそ、嫌なのに兵隊をやらされるというもの。

 これにも手を加えていく。

 まずは徴兵期間を半年に短縮する。



 徴兵の問題は何年も軍隊に人間を固定する事だ。

 だから嫌なことがあっても簡単に辞められない。

 この問題を解決するために、兵役期間を大幅に短くする。



 当然ながら、訓練期間は短くなる。

 軍が求める一人前の兵士にはなれない。

 しかし、それでいい。

 徴兵とは、事が起こった場合に武器が使える者を確保するのが目的だ。

 ならば、最低限必要な事だけ身につけていればよい。



 そもそも、一人前の兵士にする必要がない。

 そんなものは軍人として生きていこうとする者がなればよい。

 普通の人間は一人前の軍人で無く、一人前の社会人になりたいのだ。

 兵隊ではない別の仕事で一人前になりたいのだ。

 自分が望む道で食っていきたいのだ。



 当たり前の事だ。

 そんな思いを無視して強制的に兵隊をやらせるのが徴兵制である。

 こんなものが制度として成り立つわけがない。

 そもそもとして破綻している。



 それでも兵力は確保しなければならない。

 なので制度そのものは簡単になくせない。

 だが、ならば徴兵の負担を出来るだけ小さくする。



「短期間の軍事訓練。

 徴兵制でできるのはここまでだ」

 チェンバレンにとっては、これが制度としての限界と考えている。



 それに負担は徴兵された者だけにかかるのではない。

 徴兵を維持する軍隊にも、そして政府の予算にもかかる。

 これもまた削らねばならない部分だった。



 もっとも、中には軍隊が適してる者もいる。

 そういった者には長く続けてもらいたい。

 なので、3ヶ月区切りで兵役期間を延長できるようにしていく。

 やりたいものは軍に居続ける事ができるようにする。



 とはいえ、徴兵は徴兵。

 契約更新の限界として、最大4年間と期間を定める。

 最初の半年の義務期間も含めてだ。

「もっと軍にいたいなら、専門の職業として軍人になってもらうつもりだ」

 階級はとわない。

 一兵士であってもかまわない。



 そもそもとして徴兵の段階で希望も聞いていく。

 軍に入りたいという志願者を優先して採用していく。

 才能や能力は問わない。

 最低限必要な水準は定めるが。

 やる気の無い天才より、やる気のある凡人の方が欲しい。



 軍隊に限らないが、どこも定員を埋めようと、素質や適性を無視して人を集めてる。

 徴兵制の軍隊はこれをやりやすい。

 まず、ここから改善していかなければ。

 でなければ、軍隊で反乱が起こる。



 事実である。

 虐待された者が横暴に反発していく。

 立派な正義だ。

 この復讐が起こるのは、問題をおこす原因があるからだ。

 この原因をたださねばならない。



 ならば、そもそも発生させなければ良い。

 結論はこうなる、『可能な限り志願者を採用しよう』と。



 その為の第一歩として、海軍の削減。

 これによって絶対に人員が余る。

 だから、海軍をやめたいという者は素直に退役させてあげる。

 これがどれ程になるのかは分からないが。



 陸軍も同じだ。

 こちらは削る余裕もないが、それでも希望者を引き留める事無く、素直にやめられるようにする。

 陸軍も虐待の温床であり、決して褒められた環境ではない。



 そもそも徴兵という制度が間違ってる。

 強制的に兵士にさせられた者が、素直に仕事をするわけがない。

 だから兵士による上官殺しが起こる。

 武器を持って前線に立つ事が多い。

 その時に指揮官を狙うのは敵ではない。

 普段から虐げられてきた兵士である。

 当然の報いだ。



 なので、徴兵制を変えていく。

 いきなり無くすのは難しいから、まずは中身を変える。

 何年も兵士として拘束しない。

 いや、いっそ収監というべきか。

 その為に期間を半年にする。



 そして徴兵制度の性格を変える。

 兵士を確保するためではない。

 一般人に軍事訓練を施す期間とする。

 この為、可能なら訓練期間中でも家に帰れるようにする。

 1ち日の訓練が終われば、軍の基地や施設から解放してやる。

 地方から出てきてる者は宿舎を用意する、当然基地の外に。



 そして、徴兵期間中でも嫌ならすぐにやめられるようにする。

 無理して続ける必要は無い。

 こうしないと虐待の温床がすぐに出来る。



 そして、虐げられた人間は戦場で必ず蜂起する。

 指揮官を殺す。

 軍艦を内部から破壊する。

 戦争どころではなくなる。



 未来の記憶が確かならこれから戦争になる。

 かつての世界大戦を超えるほどの大きな規模の。

 その時に戦えない軍隊を抱えてるわけにはいかない。



 だから軍隊を作り変えなくてはならない。

 これは陸軍を本国に戻すだけではない。

 海軍を縮小するだけではない。

 その中の人も変えねばならない。

 組織作りや体制ではどうにもならない部分を。

 問題を組織として、体制としてできる限り発生させなくする。



「これも含めての再建だ。

 やる気の無い、すぐ逃げる兵士だけでは戦争が出来ない。

 逃げるだけならまだ良いが、同じ軍の中で指揮官を殺し続けられる事になる。

 その原因は無くさねばならない」

 ここまで聞いて覇権主義者もさすがに考える事になる。



 軍の内情を知る覇権主義者は、さすがにその言い分を否定出来ない。

 実際、海軍の大半は旧式艦艇。

 まともな戦力にならない。

 陸軍も本国に兵がなく、ほとんどが海外にいる。

 ましてその中身ときたら。

 悲惨の一言に尽きる。



 つまり、組織として終わってるのだ。

 これを今まで通りに保つ事は出来ない。

 どこかで中身を切り替える必要がある。



「変えるなら今という事か」

「そうです。

 もっと適切な時期があるかもしれない。

 でも、それを待つ余裕もない」

 もはや時間は無い。

 未来云々に関係なく。

 組織として限界にきてる植民地省や軍隊をここで変えなければならない。

 でなければイギリスは終わる。



「やむなしか……」

 大半の利権保有者や覇権主義者も、事実を前にすると諦めるしかない。

 まともな者や頭を使える者ならば、何をするべきかは分かるからだ。



 例外もいるが、それらは全て排除していく。

 説得するだけ無駄でしかない。

 ただただ己の願望を押し通すだけなのだから。

 そういう人間は門前払いにしていく。

 それでも強引に事に及ぼうとするなら、警察に出向いてもらう。

 実際、何人かは牢屋に入る事になった。



 そこまで積極ではない反対者達は、不承不承ながらにチェンバレンの意向に賛同していく。

 目先の偉容を保つには、無理が大きすぎると理解しながら。



「未来がどうなるかはわからない」

「だが、現状が悲惨なのは確かだな」

 そう言って利権と覇権も理解していった。

 納得まではできなくても。



 それでかまわなかった。

 チェンバレンが求めたのは心のそこからの賛同ではない。

 ただ、今がどうなってるのかを理解して、するべき事に賛成してもらう。

 それだけが出来れば十分だった。

 そんな事を求めるのは不可能だ。

 人間は自分のやりたい事をしたい存在なのだから。

 心が反発する事に納得する訳がない。



 かくて様々な人間の不満をいなし、調整をしていく。

 動ける部分からは動いてもらう。

 そうして既成事実を作りながら、チェンバレンは2番目に決定権を持つ者の所へとむかった。

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