11 利権と覇権への対処 4
軍の再編は単なる縮小ではない。
不要なものを削り、必要なものを加える。
今の状態だと、海軍を縮小して陸軍を拡大する。
大きく見るとこうなる。
そして、海軍の中でもさらに再編をしていく事になる。
「戦艦の半分を保管状態にする」
再編の内容を端的にあらわすために、チェンバレンはこう示した。
実際、イギリス海軍において戦艦は大きな負担になっている。
旧式も含めて約20隻を保有していた。
これらの維持運用に莫大な金がかかる。
なので、これを半減させる。
「特に旧式艦艇は。
ろくに戦力にならないものを放置するわけにはいかない」
戦力は期待できない。
なのに金だけは使う事になる。
こんな事を許容できるわけがなかった。
恐ろしいことに、旧型が全体のほぼ半分を占めている。
これらは戦力どころか、お荷物でしかなかった。
こんなのに乗せる水兵がかわいそうでしかない。
「他の艦艇もだ。
旧式から先に保管状態にする。
これで稼働艦艇を3割削減する」
残るのは新造艦、戦力になる艦艇。
戦力の大幅な減少は避けられる。
とはいえ、これだと展開できる範囲が減る。
イギリスから地中海、そしてアフリカを経由してインド洋から東南アジアまで。
さらには大西洋に展開するイギリス海軍は数がどうしても必要になる。
その数を減らすのだから、問題はどうしても出て来る。
「だから、小型の哨戒艦を増やす」
これが再編における増強・補強部分になる。
哨戒とは、見回りや偵察などを主とする艦艇になる。
戦闘力は低く、戦争には使いづらい。
しかし、維持費が安く済むので航路の警戒などをさせるには都合がよい。
イギリス海軍はこれがとてつもなく小さく弱かった。
だが、哨戒や警戒、偵察といった部分にあてる小型艦艇が増える事の利点は大きい。
維持費もそうだし、動かすのに金がかかる戦闘艦艇を使う必要がない。
偵察や警戒、哨戒に戦艦を使うわけにはいかないのだ。
この役目を新たに増強する小型艦艇に委ねていく。
これだけで数多くの目と耳を海に放つ事になる。
どこかで何かが起これば、即座に艦隊を動かせるようになる。
それも、効果的に。
無駄な動きを省くことができるのだから、戦力はむしろ増強される可能性すらある。
「小型の空母を増やす」
これも納得のいくものだった。
発展の著しい航空機。
これを海で展開できる空母。
これらは未だ実力は未知数ではある。
しかし、必要な戦力として配備は必要と誰もが理解していた。
軍事に強い関心を持つ者ならば特に。
「潜水艦も配置しておくべきだろう。
これらがどれ程の戦力になるかは、あの大戦ではっきりしてるのだし」
ドイツが繰り出した潜水艦。
その対処に苦悩した記憶はまだ新しい。
だからこそ、これらを使う事に異議など誰も出さなかった。
総じて、大型艦艇や戦闘艦艇を減らして、小型艦艇を増やす。
単純な艦載砲の数は減るが、効率的な戦力運用能力は上がる。
「もちろん、ただ艦艇を減らすだけではない」
艦隊再編はこれだけでは終わらない。
「旧型艦艇の破棄。
これにかわって、新造艦も加えていく。
交代という形になる。
これで可能な限り戦力を維持したい。
数は増やしはしないがな」
これも必要な措置だった。
数だけが多くても戦力にはならない。
その中身が最新の戦闘についていけない古いものでは意味が無い。
とはいえ、一斉に無くすわけにもいかない。
段階を踏んでいく必要がある。
「ただ、いくつかは再利用可能なものもある。
これは徹底して利用したい」
具体的には駆逐艦だ。
船体を、胴体を利用して中身を入れ替える。
これだけで建造時間と金がうく。
これらを護衛艦として再生していく。
武装だけで無く、エンジンをはじめとした機器すらもとりかえて。
また、軽武装の警備艦として、日常的な巡回や哨戒、地域の警備などをさせる。
「この小型艦を100隻。
できればもっと増やしておきたい」
巡洋艦も同じように旧型艦を廃棄していく。
利用できる船体の艦艇は中身を入れ替えて作り直していく。
限られた予算で戦力を維持するためにはこうするしかない。
「これをこれから何年かかけて進めていく。
できれば10年以内に完了させたい」
無茶な話である。
だが、必要なのは覇権主義者にも理解できた。
今のイギリス海軍は旧型艦艇が多すぎる。
ろくに戦力にならないのに、無駄に経費を注ぎこんでいる。
この状態を改善しなければならない。
でなければ覇権主義者が求める強さを手に入れる事ができない。
「それに、人も解放しなくてはならない。
人材育成も」
艦隊再編によって行いたい事がこれである。
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