【幕間】クラレンスたちのとある一日
幕間です。
クラレンスたち、主にクラレンスから見ての碧たちパトリの日常です。
仕事に追われ、悲鳴を上げる可愛い「お嬢」に苦笑いするクラレンスたち──
クラレンスたちは、普段はスリープモードで休眠し、毎朝七時に起動するよう設定されている。
だが、緊急連絡用のマイクのスイッチが入るとスリープモードは解除され──
『緊急案件! 近隣の工事現場にてロボットが暴走、同時に銀行強盗が起きているとのこと! 戦闘員は至急装甲車へ移動を!』
碧の指令の声を聞いて頷いて飛び出す。
クラレンスたちの部屋は戦艦の近くにあるので、装甲車や戦艦に即座に乗り込めるようになっている。
四人全員が乗り込むと、碧とノウェム、そしてウヌスが入ってくる。
「少し飛ばすが舌は噛むな」
ノウェムがそう言うと、碧はお口チャックモードになる。
もう見慣れたものだった、四人には。
パワードスーツを装着し、現場に出ると、明らかにロボットたちは銀行強盗を守るように動いていた。
「クラレンス、メフィスト、レイジング、ガンツ! ロボット達の方をお願い!」
「ええ、お嬢!」
「まかせて、お嬢!」
「任せろ、お嬢」
「やったるぞ!」
威勢の良い返事をして、ハッキングされたロボットたちに向かう。
工具を振り下ろすのを、クラレンスはエペで弾き、そのまま、足に付いた電撃武器でロボットを緊急停止させる。
メフィストはロボットの頭の上を掴みながらくるくると動き回って混乱を誘発させる。
レイジングは警棒のような停止装置を次々とロボットにたたき込み、緊急停止させていく。
ガンツは、工具を振り下ろすロボットを、その頑強な体で弾き、ロボットを掴んでは放り投げていた。
100体ほどいたロボットを制圧した頃──
「あれ⁈ 俺達何やってたんだ⁈」
「ビル壊れてる⁈ 道路も⁈」
ハッキングされていたロボット達は正気に戻った。
ノウェムかウヌスがハッキングを解除したのだろう、とクラレンスは察した。
「さて、帰ろう──」
『碧様、緊急の依頼です、木星にパラシートゥスの群体が接近中です! 至急対応をお願いします』
「……はーい」
多分ご飯を食べていなかったのだろう、クラレンスたちにはしわしわになっているであろうバイザーの下の顔が想像できた、バイザーで見えなくても。
「次行こう!」
それでも気力を振り絞り、声を出して言う碧。
「「「「はい、お嬢!」」」」
四人は声を揃えていった。
空きっ腹なのを想定して、装甲車で移動中にノウェムがゼリー飲料「NOVA」を取り出して碧に渡して、碧はそれを飲んでいた。
緊急の依頼が続くとコレが起きるんだよなぁと生暖かい目で、2人を見守るクラレンス達だった。
「ヤダー! お家帰るー!」
クラレンスは思わず苦笑した。
パラシートゥス迎撃戦――宇宙空間での戦いになると、碧はよくこの言葉を喋る。
その気持ちも分かる。
何せ、木星を覆い尽くすような太い帯状の輝きが映っていたのだから。
「ヤダヤダ、今日こそは帰る、お家帰るー!」
「そんなこと言っても来たのだから我慢したまえ」
「うわーん!」
あまりにも酷い戦況に現実逃避というか、逃げ出そうとする碧をひっ捕まえてノウェムは減圧室にウヌスと共に向かった。
「よっしゃ、俺等も、援護射撃するぞい!」
「弾幕薄いよー味方の人達! 何やってんの⁈」
やる気満々のガンツと、味方の弾幕の薄さにブーイングを放つメフィスト。
「アレで手一杯なんですよ、許してあげなさい、それより主砲こちら一発目は?」
「充填まで30分だ、まだ時間がかかる」
「レイジングはそのまま主砲発射でき次第、主砲発射用意を! メフィスト、ガンツは弾幕を張りつつ、迎撃ミサイルでパラシートゥスの迎撃を!」
「よっしゃ!」
「任せて!」
「了解だ」
クラレンスが指示を出し、他の三人が従う。
クラレンスはモニターを見てため息を付く。
「大型30体、中型50体、小型は測定不要、高速型1000もいるの知ったら、お嬢様、発狂してるでしょうね今頃……」
事実、そのことを知った碧は半べそになりながらサポートに徹して何とかノウェムとともに敵を減らしていたらしい。
「主砲発射用意完了だ!」
「こちら主砲発射用意整いました、先に主砲を発射します。レイジング、次の主砲発射用意は?」
「同じく30分後だ!」
『了解した、先陣を頼む!』
『わかった、いったん離脱する』
『了解した、離脱する』
他の戦艦の長の声と、ノウェムとウヌスの声がした。
空域から戦闘機が離脱したのを確認すると──
「安全確認良し! 主砲、発射!」
「撃てぇ!」
戦艦の主砲部分が光、そして光の帯のようなビームを放つ。
戦艦が動くと、光の帯も動き、パラシートゥスを消滅させていく。
光の帯は、およそ3分間にわたって宇宙空間を薙ぎ払った。
「残存勢力は⁈」
「大型10、中型5、小型2000、高速型100だ!」
「では次の主砲で一掃できますね」
「ああ」
そう言って次の発射までの時間を碧たちに稼いで貰い、次の主砲発射で、パラシートゥスは完全に殲滅された。
「今日はもう働かない……」
疲れきった表情で碧はそう言った。
「ロゼッタに伝えよう、とにかく碧、休め。借金返済が終わったのに、こんなに仕事が来ているのでは君はまた体を壊すぞ」
「うん……」
そう言ってフラフラしながら歩いて行く碧を見送る。
その間にノウェムがロゼッタと連絡を取り合っていた。
「こちらノウェム」
『ノウェム、碧様は?』
「倒れた、なので仕事は今日は受け付けない」
『申し訳ございません……』
「仕方ない。ナンバーズのほとんどが今護衛任務に就いているのだから」
『では、他の案件はこちらで何とかしてみます』
「ああ」
通信を切ると、ノウェムは言った。
「という訳で、今日の仕事はここまでだ。羽目は外すなよ」
「分かっています」
「勿論じゃ」
「分かっている」
「お菓子食べるくらいは良いよね?」
「それ位なら許す」
「わーい!」
子どもの様に喜んで菓子キューブを取りに行ったメフィストを見て、クラレンスたちはあきれた様な、情けないような顔をした。
「メフィスト……」
「普通のエネルギードリンクと、酒以外のエネルギードリンクなら飲んでも構わんぞ」
「儂は緑茶味のエネルギードリンクでええわい」
「私は普通のエネルギードリンクでいいです」
「俺もだ」
「私は碧を見てくる。邪魔をするなよ」
三人が飲むものを言い終わると、ノウェムは釘を刺すように言って自室──碧と自分の部屋へと向かった。
「まったく。最初はあんなに奥手だったのに、今じゃ『昔のことなんて知りませーん』って顔しおって」
「まぁまぁ、良いじゃないですか、お嬢様が幸せなら私達はそれで良いではないですか」
怒るガンツを、クラレンスは宥める。
「そう言えばさーお仕置きされたっていってたじゃん、お嬢ちゃん。尻叩きされたのかな?」
「それはねぇだろ、尻抑えてなかったし」
「ま、まさか無体を働いたんじゃなかろうな⁈」
「お前は黙っとけ」
ガンツが身を乗り出す。
レイジングがデコピンして大人しくさせた。
「んな訳あるか、無理矢理やったりなんかしたらお嬢さんは例えノウェムでも口聞かなくなるどころか、別れてるぞ」
「じゃあ、何なのさー?」
「知らん、が。世の中知らない方があるってことだ、お嬢の羞恥心を刺激しないためにも」
「それと自尊心もですね」
「「⁇」」
ガンツとメフィストは分からないと言わんばかりに首を傾げた。
「第一、俺ら出歯亀しすぎたんだよ。だから、お嬢さんが『よほどのことがない限り部屋には近づくな』って言い出したんだろ?」
「それは否定できませんね」
レイジングの言葉にクラレンスは苦笑いを浮かべた。
「分かったんなら、お嬢さんとノウェムのことは見守ってやろうぜ」
「勿論ですよ」
「うーん、仕方ないなぁ」
「というか積極的に出歯亀しとったお前さん等が言うんか」
ガンツの言葉に、三人は一瞬固まったが、素知らぬふりをした。
それを見てガンツは息を吐いた。
「儂等にとっちゃいつまで経っても、お嬢はお嬢じゃもんなぁ」
と、しみじみ言いながらガンツはエネルギードリンクを飲み干した──
クラレンス達視点のお話です。
どうでしたでしょうか?
碧がパラシートゥスを見てお家帰るー!発言は彼らにとっても分かる発言です。
そして休みを取ると邪魔をしてくるノウェム、何してるのかなー?
と思わせつつ、何か察してる一部。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




