83.火星の遊園地~招待されました~
ロゼッタから火星にできた新しい遊園地の試遊を頼まれた碧。
不思議と感じつつも、「ロボットも人も楽しめる遊園地」をテーマにしていると聞き納得する。
そしてドゥオを除くみんなで出発する──
「遊園地の試遊?」
『はい、火星にできた新しい遊園地で試遊していただくのが今回の依頼です』
ロゼッタさんからの不可思議な依頼に私は首を傾げる。
「それ別に私たちじゃなくても良くないですか?」
『いえ、正確にはこの遊園地どんなロボットたちとも一緒に楽しめる遊園地をテーマにしているので、ロボットをご家族として暮らしている碧様たちが適任だとレティシア様が』
「うーん……」
心が惹かれない訳ではない。
遊園地は、みんなで行った方が楽しい。
ならば──
「──パトリ社のみんなと、咲良ちゃん、それから桐人兄さんにも来てもらいました! ドンドンパフパフー」
私はパトリ社の戦艦の前でそう言った。
「あの、私も行っていいのかな?」
「俺は保護者枠でいいーわ、咲良遊んでこいよ」
桐人兄さんの行動は読めていた、咲良ちゃんなら良いだろう。
「ところでドゥオはどうした」
「仕事でやらかしまくったから宿題出して今もやってるから留守番」
「アホかアイツ」
桐人兄さんは呆れていた。
まぁ、私も呆れたけどね。
本当に、人には向き不向きがあるのは分かるけど、覚える気がないのが分かってるってトレースさんに言われてるから皆心を鬼にして接している。
「遊園地ー! ぼく楽しみだよー!」
「また働きたいの?」
「ううん、楽しませる側だったから楽しむ側ってどんな気持ちだろうって!」
「そっか」
純粋に楽しそうにしているメフィストについ笑顔になってしまう。
「遊園地というものは、何をどう楽しめばよいのでしょうか……」
「立てたことはあるんじゃが、儂等が遊ぶもんだとは思っておらんしなぁ」
「元戦闘型の俺が楽しむって言ってもなぁ……何をどう楽しめばいいんだ?」
逆に困惑している三人を見て、を見て私は三人に抱きつく。
「細かいことは良いから、一度行くの! ね?」
「わかりました……」
「わかったわい」
「ああ……」
そして視線をそらすとそこには同じく困惑したノウェムさんが。
「ノウェムさん、遊園地は行ったこと……」
「ない、その時は別の護衛がいて、私は園の外で待機だった」
グレイズさん……徹底的にノウェムさんに感情を持たせないようにしていたんだな。
ムカムカしてきたぞ?
「じゃあ、一緒に楽しみましょう! 初めての遊園地」
「あ、ああ!」
初めての遊園地を一緒に楽しめることが嬉しいのだろう。
ノウェムさんはどこか期待に胸を膨らませているようだった。
「私は涼様の護衛をいたします」
「では、私は宗一氏の護衛をしよう」
「遊園地か、貸し切りってことは一目気にしなくて良いんだろ? ひゃっほう!」
「儂はいいわい、適当にベンチか飲食店で時間を潰すからの」
遊ぶ気満々の涼兄さんと、逆に遊ぶ気全く無しの宗一お爺ちゃん。
まぁ、そういう年齢層にも配慮しているんだろう。
そんな事を考えていたら、通信機が鳴った。
「はいもしもし」
『碧様、ロゼッタです。今回ロボットの数がもう少し欲しいとの事でしたのでアルジャン社の方々にもご協力を要請いたしております。また我が社の社員にも協力していただいてます』
「なるほど、分かりました」
『では』
通信を終了して、桐人兄さんたちに言う。
「アルジャン社のみんなも来てるっぽいってさー。あとモナル社の社員さんたちも」
「え⁈」
「こりゃあ咲良の争奪戦が見られそうだな」
ニヤニヤと笑う桐人兄さんに、咲良ちゃんは顔を赤くして怒った。
「もう、桐人の馬鹿! 私は碧ちゃんたちと廻るの!」
「へいへい」
「……じゃ、しゅっぱーつ!」
「「「「「「おー!」」」」」」
皆で戦艦に乗り込み、上昇してワープする。
火星の上空付近に出ると管制室の誘導で、戦艦を指定の位置に止める。
宇宙空港を出ると巨大な車が何台も止まっていた。
ロゼッタさんもいる。
「ロゼッタさん」
「お待ちしておりました。アルジャン社の方々は既に向かっております」
「じゃあ、私達も乗り込もう?」
「ああ」
皆それぞれ車に乗り込み、自動運転で目的地へ向かう。
30分くらいして、目的地に着いた。
そこは居住区エリア一杯を使った広さの遊園地だった。
「デカ⁈ 一日で回れないじゃん絶対これ!」
「ですので、ホテルが内部に何カ所かあります」
「な、なるほど」
ロゼッタさんの解説に納得しながら中に入って行く。
「私達だけじゃないんですね」
「はい、会社で家族持ちの方に声をかけておりますので」
「へー」
「あとアルジャン社のような会社にも声をかけてます。体験した内容はこのタブレットにご記入ください」
そう言ってタブレットを渡される。
その後周囲を見れば色んな方々が行き交っている。
家族連れのお父さんやお母さんは子どもに引っ張られている。
日頃の家族サービスなんだろう、頑張ってください。
「「「「「「「咲良‼」」」」」」」
アルジャン社の方々が駆け寄ってきた。
咲良ちゃんを見る、気まずそうな顔をしている。
「咲良! ミーたちと一緒に回ろうヨ!」
バスケット選手型のロボットさんがそう言うと咲良ちゃんは私の腕を掴んで。
「ごめん、みんな。私は碧ちゃんたちと回りたいの!」
「エー⁈」
「なん、だと」
がっくりと項垂れていくアルジャン社のロボットさんたち。
なんで、そこまで凹むのか分からない。
「そういうわけだ、俺等はこっちと回るから、じゃあな!」
「桐人、何故お前が先導する」
ノウェムさんがむっとした表情で文句を言う。
「まぁまぁ、ノウェムさんいいじゃない。じゃ、回りましょう、咲良ちゃん、みっちゃん!」
「「うん!」」
「以前はごめんなさい、私の所為で大怪我させてしまって……」
「いいえ、こちらこそ。私の都合で巻き込んでしまった所為で桐人が500億パトリに借金させてしまって……」
えー、先ほどからこんな感じでみっちゃんと咲良ちゃんは謝罪を繰り返し合っていた。
あの事故はもうすんだことだから気にしないの二人とも!
「二人とも結果として無事だったから、もうこのお話は止めよう」
「でも……」
「碧ちゃん、でも……」
「せっかく遊園地来たんだからさ、楽しもうよ?」
「「……」」
気まずそうな顔をしてる二人。
「そうそう楽しまなきゃ損だぜ?」
「二回続けて私に500億の借金させた桐人兄さんが言うな」
隠し持っていたハリセンで桐人兄さんを殴る。
「いっで!」
「……碧、それは何だ?」
そうか、ノウェムさんハリセンも見たことないのか。
「ハリセンだよ。馬鹿やった人をツッコむ道具。元々は漫才とかで使われてた小道具なんだけどね」
「貸してくれ」
「ダメ」
私は即座に何をするか理解したので拒否した。
「何故だ」
「これで桐人の頭殴るつもりでしょ? ノウェムさんがやったらスプラッターになるからダメ」
「ちっ」
「あぶねぇあぶねぇ」
桐人兄さん、言っちゃ悪いけどノウェムさんに対する日頃の行いが招いたからだよ。
「大丈夫だよ、ノウェムさんが殴っても。私が殴ったら首が飛ぶけど、ノウェムさんなら多分体硬化させて耐えると思うから」
「咲良、俺の考え読むなよ」
「じゃあやっても──」
「ダメだって」
「ちっ」
咲良ちゃんも咲良ちゃんで物騒なこと言うなぁ。
「あ、あの。そう言えば咲良さんって何者なの?」
「あ、えーと……」
なんて説明しよう。
「テロリスト共に誘拐されて強化人間に無理矢理されたんだ、俺はそれを治す為にやっているが少々厄介な方法で強化人間にしたから手こずっているんだ」
「そう、だったんですね……」
桐人兄さんが小声でみっちゃんに言う。
ある意味嘘は言ってない。
だが、真実とはずれている、みっちゃんには深入りしてほしくない。
みっちゃんは社員とはいえ、部外者だ。
だから深入りさせたくないのだろう。
「それにしても面白い遊園地、いやテーマパークだな」
「遊園地って言ってたけど?」
「色んな分野があるパンフレットを見ると、異種格闘技コロッセオまであるぜ」
「……それレティシアさんが入れた企画じゃない気がする」
レティシアさんならもっと違うものを仕込むはずだ。
私は少し違和感を覚えた。
「それはグレイズ様が押し込んだ企画でございます」
「さすが会長さんだな、でどうよ?」
「武器などはこちらで用意したもの、対戦相手は同じ競技か、武器が近い競技のもの限定だそうです。そのためか、腕試しをしたいロボットの方や観戦したい方々で今大盛況です」
「やっぱ疑似とは言え試合は見世物にはもってこいだな!」
桐人兄さんは鼻で笑った。
グレイズさんと観客を馬鹿にしてるんだろう。
そういうものなら、私は現場でもっと酷いものを見てきているので私は見たいと思わない。
「おや、のんびりっこパークも併設されてるぞ?」
「うそ⁈ どこどこ⁈」
「どこですか⁈」
「桐人どこにあるの⁈」
咲良ちゃんが桐人兄さんを揺さぶる。
そういや、咲良ちゃんものんびりっこ好きだもんね。
のんびりいぬが好きだって。
「ゆーすーるーなー!」
「あ、ごめん……」
「全く、いつまで経ってもぬいぐるみ好きの可愛い子だなお前さんらはいいぜ、こっちだ」
「あ、俺等、ロボットも乗れるジェットコースターあるからそっち行ってるわ」
涼兄さんが言い出した。
「わかった」
「よーし、メフィスト! 行こうぜ!」
「OKだよ!」
「では私も同行します」
メフィストと涼兄さんの後をトレースさんは私達に一礼してから付いていった。
「儂はそこの喫茶店で休ませて貰うよ」
「では私もそうしよう」
宗一お爺ちゃんはそう言ってウヌスさんに守られるように喫茶店へ入っていった。
「クラレンスとレイジングと、ガンツはいいの?」
「遊園地ではしゃぐより、はしゃいでるお嬢さんを見てるほうがいい」
「そうですね、お嬢様が楽しんでいるなら私共も嬉しいのです」
「そういう訳でこっちに付いていこうと思ったんじゃ」
「ノウェムさんとセムさんは?」
「恋人とせっかく初の遊園地デートなのにほっぽり出せと?」
「私は美奈様の護衛なのでご一緒します……はぁ、涼様も罪深い御方です」
ノウェムさんのそういう所大好き。
セムさんは真面目だなぁ……ん?
涼兄さんの何が罪深い?
「同感だ」
ノウェムさんも同感してるし一体何なんだろう?
桐人兄さんも呆れ笑いしてるし、咲良ちゃんも困った顔してるし、みっちゃんはすこしだけしょんぼりしてる。
「……まぁいいや、のんびりっこパークに行こう!」
「「「「おー!」」」」
私はノウェムさんと手を繋ぎながら、桐人兄さんに先導されて向かった──
ドゥオは留守番です、同情はしない。
咲良と桐人が代わりに同伴者としてきました。
みんなが楽しむなか、何故か美奈だけすこししょんぼりしている様子。
今までの話を読んでくださった方なら理由が分かるかと。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




