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80.火星防衛戦~借金完済!~

八月半ば、碧とノウェムは細々とした内容の仕事ばかりで、割と平和な日常に困り果てていた。

そんな中、緊急の依頼が飛び込み──



「8月も半ば……そろそろ大きい仕事来ない、いや世界が平和なのを望むなら来ない方がいいんだろうけど」

「そうも言ってられないのが悲しいところだな」


 私の呟きにノウェムさんがそう返す。

 ロボット暴走鎮圧、銀行強盗捕縛、テロリスト鎮圧などある種細々としたものは来ているが、テロリストはネブラとは無関係。

 ロボット暴走も同じく。

 銀行強盗も同様。


「現状の稼いだお金は幾らだっけノウェムさん」

「今自由に使える利益は80億だな」

「借金とは別口のお金だから、まだ返済には回してないんだよね」


 私とノウェムさんは顔を見合わせ、小さくため息をついて再びデスクワークへ戻った。

 みっちゃんはセムさんと仲良くなってから、さらに山盛りの書類を持って来るようになり、三人して止めに入った。

 セムさんもみっちゃんの事務能力の高さには驚いていた。



 こんなに才能あるみっちゃん潰したバルトロ社、本当に馬鹿じゃないの?

 と、未だに思う。

 そのバルトロ社、株式全部お買い上げでモナル社の傘下になったから、色々大変だったと、ロゼッタさんやレティシアさんからの情報が。


 何せ長年染みついていたパワハラ、セクハラ、隠蔽体質を改善するのに、かなりの費用を費やしたとか。


 お疲れ様です、としか言えなかった。



「うーん、お仕事まだかなぁ?」


 そう呟いていると──


 通信機が鳴り響いた。


「はい、もしもし、パトリ社です!」

『碧様、至急の依頼がございます、木星の防衛部隊が壊滅し、パラシートゥスが火星に接近中とのことです』

「了解しました!」

『高速移動型のパラシートゥスが多数いるとのことです、お気をつけ下さい』

「了解!」


 私は緊急放送用のマイクを取る。


「パラシートゥスが火星に接近中! 至急戦艦に乗り込み指定ポイントまでワープせよ!」

「「了解」」


 ノウェムさんは私を抱き上げ、そのまま社長室の窓から飛び降りた。

 当初は心臓に悪かったこの行為ももう慣れた。

 ウヌスさんも窓から飛び出し、そのまま三人で戦艦に向かう。


「全員搭乗済み⁈」

「「「「はい! お嬢!」」」」

「上昇し、ワープ!」


 安全区域まで上昇しワープを行う。

 光が目の前に広がり、それが消えると、宇宙空間が広がっていた。


 木星の防衛ラインと思われる場所に紫の帯が広がっていた。

 まるで、火星を包み込もうとするように。


『全艦隊に告ぐ! 此処でパラシートゥスを迎撃させねば火星に甚大な被害が生じる! その次は月面へと移行し、最後はコロニーや地球に到達し、未曾有の危機に陥るだろう!』

「……この声の人、聞いた事あるな?」


 集まった戦艦を鼓舞する演説が入った。


「火星政府軍の大佐だ、以前後は任せたと言われただろう」

「あ……あの人かぁ……」


 撤退した後、表彰させてくれとか来たんだよなぁ。

 私は名誉が欲しいのではない、人命救助とおぜぜ(お金)がほしいだけです。


『故になんとしてでも食い止めてもらいたい!』

「言われなくてもそうしますよっと」


 私たちは演説が終わると直ぐさま減圧室に入り、無重力に体を慣らし、パワードスーツを装着して戦闘機に乗り込む。


 そして出撃すると──


「ぎゃー‼ 早いー‼」

「あの男、訓練用のシミュレーターを使ってなかったら今頃パラシートゥスの群れに私と碧は突っ込んでたぞ! 馬鹿か⁈」

『激しく同意する、ここまで魔改造するとは彼は天才か変人のどっちだ?』

「ぎゃあああ早すぎて目が回るぅううう!」


 宇宙空間のはずなのに、視界と体の感覚がまったく噛み合わない。

 煌めくパラシートゥスを撃破する音だけは聞こえた。


「うぎゃああああああ周囲がぐるぐるしてサポートできないぃいい!」

『戦闘機サポートプログラム起動』

「ふへ⁈」


 コードが戦闘機のモニターと繋がる。

 バイザーが黒く染まる。

 光る点が無数に表示される。

 すると音声が耳に伝わる。


『右から30高速型、左から40小型、下から60高速型接近中』

「ノウェムさん聞こえた⁈」

「勿論だ!」


 ノウェムさんは私のバイザーから聞こえた音声を聞いたらしく、急ぎ追撃ミサイルを連続で射出しながら上昇する。



 バイザーに急激に接近している点を見つける。


『警告、超高速型接近、右方向へ避けることを推奨』

「だって、ノウェムさん!」

「ああ!」


 ノウェムさんは右方向へ旋回し避ける。



『第一陣主砲発射準備整いました!』

「分かった、一旦離脱しよう」

「うん」

『了解離脱する』


 クラレンスの言葉に私は、その場を一旦撤退し、主砲が一斉に放たれるのを見る。


『高速型200、小型1000、中型2、大型3残存。次の我が戦艦の主砲発射まで30分、他戦艦は1時間必要な模様』

「あーもー! 補助は嬉しいけど、なんか嫌ー!」

「私もやや同感だ、あの男の手のひらで踊らされているようで」


 ノウェムさんは若干怒ったように言った。


「本当、ノウェムさん桐人兄さん嫌いだよねー!」


 戦場に再度突っ込み、バイザーに表示された文字や数字を確認する。


「右10!」

「分かった!」


 ミサイルで迎撃する。


「右10! 超高速型が左から来ています! 上昇してください!」

「了解した!」


 上昇しながら追撃ミサイルで迎撃する。


 私達を避けた超高速型は、そのまま母艦へ突っ込んでいった。

 だが、強力なバリアの前に一瞬で消滅していた。

 桐人兄さんの魔改造はつくづく恐ろしい。

 そう思った。



 そして30分が経過し──


『主砲発射します!』

「了解! ノウェムさん! ウヌスさん!」

「離脱する!」

『了解離脱する』


 戦闘機たちが離脱すると、私達の戦艦の主砲の光が宇宙を真っ二つに裂き、残っていたパラシートゥスを一瞬で飲み込んだ。


『パラシートゥスの存在確認をいたします……残存数0。この空間は安全なものになったと確認できました』

「よっしゃ!」

『本防衛、迎撃戦にてパトリ社が最も戦果を上げたそうです』


 バイザーの自動音声が淡々と告げる。


「よっしゃ、報酬期待していいよね!」

「期待して待とう」

「うん!」


『ところで、火星政府、月面政府、宇宙開発政府から表彰──』

「お断りの返事を出してください」


 だから名誉が欲しいんじゃないんだってーの!


『かしこまりました』

「……ねぇ、ノウェムさん。桐人兄さんの作った物全部とんでもないものになってない……いや今更なんだけどね……」

「その通りだな……」


 ノウェムさんは呆れたように、疲れ切ったため息をついた。


「じゃ、帰還しようか」

「そうだな」

『了解』


 戦艦に帰還し、加圧室で重力に慣らすと、操舵室に向かった。


「みんな大丈夫ー⁈」

「え、ええ。ちょっとトラウマを連想させる事態がかなりの回数あったのでちょっとびくっとなりましたが」


 クラレンス、戦艦一人で任されてた時、高速型に突撃されて撃沈したんだもんね、戦艦が……


 あの時は生きた心地がしなかった。

 最近では、パラシートゥスを見ると金塊に見えてしまう時がある。

 命懸けの戦場でそんなことを考えている自分に、思わず苦笑する。


 でも、倒せば倒すほどお金が貰えるからありがたいんだよなぁ。





 無事に会社に帰還し、翌日──


「碧、防衛戦の報酬が振り込まれたぞ」

「見せて見せて」


 そう言ってノウェムさんに見せて貰うと──


「972億6千万……」


 思わず二度見した。


「残債は475億……」

「返せる……!」


「ひゃっふー! 借金返済ー!」


 と喜んだが首を傾げる。


「でも、いつもより金額が高くない?」

「木星防衛線を突破され、火星目前まで迫られていたことに加え、味方戦力も通常より減っていたためらしい。何より我が社の戦艦が打ち落とした巨大型の数が群をぬいていたらしい」

「恐るべし、桐人兄さんの魔改造……」

「ああ……」


 だから500億ってふっかけたのかな?

 そう思いつつ、私達は銀行へ行き桐人兄さんに送金する。


 そして会社の社長室に戻る。


「終わったね」

「ああ」


 それだけで十分だった。

 ようやく肩の荷が下りた。


 二人で静かに笑い合った、その時だった。


 通信機が鳴り響いた。


「はいもしもしー?」

『パンパカパーン‼ 碧ちゃんおめでとー‼ 借金返済頑張ったねー‼』


 ドンドンパフパフという音が聞こえる、非常に癪に障る。

 普通に頑張ったな、でいいだろう、そこは!


「おい、貴様」

『あーら、ノウェムちゃんどうしたの?』

「ちゃん付けは止めろ!」

『俺の送ったシミュレーター役に立っただろう?』

「むしろ事前にアレを使ってなかったら私達が敵陣特攻して自爆してたぞ‼」


 ノウェムさんが怒鳴る、私は顔をこわばらせる。


『そんなに怒らんでもいいじゃんー! そうなる前にパワードスーツ着ているだろうから補助入るようにもしてたしー!』

「「そういう問題じゃない!」」


 スピーカーモードになっているので、通信機に二人分の怒声が届いただろう。

 そのあと、ゴン!

 と、鈍い音が聞こえた。


『えっと、咲良です。何か桐人がごめんなさい。悪気がない分タチが悪いの、本当ごめんなさい、叱っておくから……』

「いや、咲良ちゃん、今何したの?」

『……そこら辺の壺で桐人の頭叩いたの』

「かち割ってないよね?」

『うん、大丈夫だよ』


 大丈夫な気配は全くないのだが、咲良ちゃんがそういうなら大丈夫だろう。

 私は通信を切った。



「もう二度と借金はしたくない!」

「同感だな!」

「残ったお金は全額会社の口座行き、でもドゥオ以外の皆にはボーナス出さないとね」

「ああ、そうだな」


 私とノウェムさんは顔を見合わせて笑った。







はい、借金返済です!

多分これ以上借金ネタはないと思います。

危険な場面が多数ありましたが、碧とノウェムは桐人の手のひらでころころ転がされつつもなんとか乗り越えました。

ちなみに、咲良は話を聞いてて、これ以上話を長引かせるとノウェムたちが怒ると判断したため、急遽手近の壺でゴン!しました。

なので桐人は黙りました。

ボーナスを貰ったら何をするんでしょうね?


ここまで読んでくださりありがとうございます!

誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
おお、借金完済!!まだまだ時間が掛かるかと思ったけどここで完済とは…。・・・。また借金できませんよね??作者様から言質をとってるとはいえ急に作者様の考える流れが変わることもあるかもしれないので、また借…
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