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78.碧誘拐未遂事件⁈~桐人のお陰~

戦艦と装甲車が新しくなってから、テロリストの鎮圧などのしごとをこなしてきた。

パワードスーツの恩恵もあり、任務は無事に完了することが多かった。

碧たちは仕事を順調にこなしつつあったが──




 戦艦と装甲車が新しくなって、ロボットの暴走や、銀行強盗。

 テロリストの制圧なんかの仕事がちまちま来ていた。


 昔はあんなに、大変だった仕事も、1年以上経った今ではかなり楽に対処できるようになっている。

 まぁ、テロリストの制圧はたまに爆弾をしかけたりしている輩がいるのでその捜索に手間をかけたりしているが。


 パワードスーツのおかげもある。

 市販品や軍用のパワードスーツの攻撃を食らっても私は大してダメージを受けない。

 基本破損率0%と表示されることが多い。


 その上、相手のパワードスーツのコアを一撃で破壊できる位だから凄い。

 基本的にコアは最も硬く作られている。

 コアを破壊されるとパワードスーツは解除されるためだ。

 それを一撃で破壊して無防備な相手を縛り上げるのはハッキリ言って楽としか言い様がない。


 おかげで仕事も順調にこなし──



「ノウェムさん、今月の入金総額いくらでしたっけ?」

「50億ちょうどだな」

「じゃあ、半額の25億送金しましょう」

「そうだな」


 そう言って、私は桐人の口座への送金を行う。

 会社に帰って来ると──


『はいはい、碧ちゃん、お疲れ様ー!』


 何故かタイミング良く桐人から通信が来る。

 謎だ。


『25億の入金確認したぜー』

「はいはい、それで?」

『残り475億の返済頑張れ!』

「この野郎」


 ムカつくという感情しか出てこない。


「ウチの会社を火の車営業させる気⁈」

『いやーそんなつもりはねーよ、別に』

「パラシートゥスとかいなくなったら余計返しづらくなるじゃない!」


 そう、高額な依頼は現在パラシートゥス関係が占める。

 今月はなかったが、来月はどうなることやら。


『その時は無かったことにしてやる』

「……その言葉嘘じゃないわよね」


 私は釘を刺すように問いかける。


『本当本当、俺嘘は言わねぇから!』

「はぁ……」


 パラシートゥスがいなくなると自分で言いだしてみたものの、本当にいなくなるんだろうか。

 何せ、どこから来たのか、何故202年前に突如現れたのか。

 全く分からない。


「あ゛ーくそ、やる気が起きない!」

『碧ちゃん、そんなこと言っても仕事はしないといけませんよー』

「その言い方ムカつく!」


 思わず通信機をパワードスーツでたたき割りたい気分になった。


『おんや、レティシアからの回線がお前宛に来てるな? じゃ、失礼するぜー』


 通信が終わると、再度通信機が鳴り出した。


「はい、こちらパトリ──」

『ああ、碧さん? 実はお願いがあるのだけども……』

「はい? 何ですか?」

『クソ親……げふん、父が社内の様子を見るために、重役や各子会社の社長たちと立食パーティーをするんですって』


 今クソ親父って言いかけましたよね?

 やはり長年の溝はそう簡単には埋まらないか……


「つまり──」

『はい、パトリ社の貴方も参加をと、ノウェムを護衛に連れてきてね』


 一応レティシアさんが株式保有してるからか、なるほど。


「はい、それ位でしたら」

『忙しい中ごめんなさいね』

「ヘマしないよう努力します」


 マナーはたたき込まれたが、忘れてる気がするが頑張ろう。


『いいのよ、身内のパーティみたいなものだし』


 レティシアさんはマナー面を気遣ってくれているようだ。

 ありがたいなぁ、マナーあまりにもレッスンがキツくて帰ってきてから燃え尽きてからな……


『ちなみに、桐人も隠れてきてるわよ』

「よし、見つけ次第影でしめよう」

『ほどほどにね?』


 レティシアさんは苦笑しているが、私は笑い事じゃないのだ。


「あの野郎にまた500億借金させられたんですから」

『え、私は50億と聞いたわよ』

「え?」

『……』

『「桐人 (兄さん)、あの大馬鹿者ー‼」』


 スピーカーモードにしていたため、社長室に二人分の怒声が響き渡った。

 ノウェムはあきれのため息をついている。


『あの馬鹿桐人あとで見つけ次第締めなきゃ気がすまないわ』

「そうですね」

「レティシアそれよりもだ、パーティはいつだ」

『……それが明後日』


 急すぎる!


「急すぎません⁈」

『ええ、あのクソお……じゃなくて父にも言ったけど、他のもの達には一週間前以上に告知してたそうよ』

「嫌がらせか⁈ 嫌がらせなのか⁈」


 思わずそう叫んでしまう。


『でも、ドレスは以前買ったパーティドレスで良いわ、それを着て頂戴』

「分かりました。あ、アクセサリーは……」

『貴方が普段つけている者でいいわよ』

「ありがとうございます」


 形見のネックレスと、桐人から貰ったペンダント。

 どっちも肌身離さず身につけておいたほうがいい。


 胸元のペンダントを無意識に握る。

 ……何だろう。

 胸騒ぎがする。


「ノウェムさんはスーツだよね、前と同じく」

「勿論だ。君をエスコートしよう」

「ありがとう……一応、パワードスーツのブローチつけてた方がいいよね」

「そうだな……」



 何か、予感めいたものだけど、嫌な予感がした。



 そしてパーティ当日。

 部屋に入ると談笑しており、和やかな空気に見えたが、じっとりと私に張り付くような視線を感じた。

 酷く不愉快で、気持ち悪い視線だ。


「碧?」

「ううん、ノウェムさん。大丈夫よ」


 視線に気付いているのかいないか分からないけど、ノウェムさんは私を心配そうに見た。


「碧さん、よくいらっしゃいました」

「レティシアさん……」


 私は近づきこそこそと会話をする。


「桐人兄さん見かけました?」

「いいえ、まだです。でも会場内にはいるようです」

「何処にいやがるでしょうねあの詐欺師……!」

「激しく同感です」


 そんな会話を終えてから周囲を見渡すが、桐人兄さんの姿もなければ咲良ちゃんの姿も見えない。


 一体どこ行ったんだあの二人。

 桐人兄さんは咲良ちゃんと離れることはめったにないから、おかしい。



 どこにいるんだあの二人。


 そんな事を考えていると、人とぶつかってしまう。

 腕が少し濡れた。


「申し訳ないお嬢さん、今ハンカチを」

「大丈夫です、お気になさらず、こちらこそすみません」


 恰幅のよい人の良さそうな男性がそう謝罪すると、私はノウェムさんに


「ちょっとトイレ行ってくるね」

「付いていこうか?」

「大丈夫よ、すぐ戻るから」


 私はトイレに行き腕をハンカチで拭いてハンカチを洗い直した。

 そして通路に出ると違和感で後ろを振り向いた。

 でも誰もいない、気のせいかと思い来た道を戻ろうとする。


「ふぅ、さて戻る──んぐ⁈」


 背後から迷彩特化型のパワードスーツを着た人物が三人現れ、私を特殊素材のロープで縛るとそのまま窓から飛び降り、車のボンネットに押し込んだ。


「んー! んー!」


 なんなのよこれ!

 あの、視線の正体は此奴らか⁈


 とか考えていると、そのまま豪奢な屋敷に運ばれベッドの上に転がされる。


 目の前にいたのはチャラそうな顔の、スーツ服の青年。


「いやぁ、やっぱり上物だなぁ。最高じゃん?」

「んぐー!」


 此奴か、そう言えば会場に恰幅の良い男性の隣にいたな此奴!

 思い出したぞ!

 視線の正体此奴か!


「詳しくはしらねーけど子会社の社長さんだろぉ、俺は本社の重役の息子なんでね、そこんところはもみ消して貰うよ親父の金でな」

「んー!」


 クソが!


 男の指先が触れた瞬間、胸元のペンダントが眩く輝いた。

 青白い衝撃波が部屋中へ広がり、

 男の身体は壁まで吹き飛ばされた。


「え? え?」


 突然のことに混乱しつつも私は起き上がって男と距離を取る。


「っ……なんなんだよ全く。だけど丁度良い、脱がせる手間が省ける──」


 私はブローチに手を当てようとした、その時──


 ドゴォ!


 壁をぶち破って入ってくるパワードスーツの人──ノウェムさんがいた。


「ノウェムさん!」

「碧無事か? GPS反応を追って一直線に壁を突き破ってきたのが正解だったな」

「おい、碧ちゃん大丈夫か⁈」

「桐人兄さん!」

「ブローチにGPS、ペンダントに防衛機能もつけといて良かったぜ!」

「碧ちゃん大丈夫⁈」

「ガレウス専務、これはどういう事ですか?」

「レオン! お前はあれだけいっても女性を手込めにする癖は直らんのか!」


「グレイズ会長──お父様に報告する必要がありますよ、我が会社の取引先の社長を手込めにしようとしたと、私の夫の妹を手込めにしようとしたと」

「え、え?」


 レオンと呼ばれた男は動揺している。

 が、ノウェムさんから一発パンチを貰って吹っ飛んだ。

 ノウェムさんは私を姫抱きにすると、そのままパワードスーツを解除した。

 そして私を強く抱き締め、無事を確かめるように頬へキスを落とした。


「何かされなかったか」

「大丈夫! 未遂で済んだ!」

「俺の防護機能のお陰だな」

「ガレウス専務、明日貴方の出方によって進退が決まると思いなさい」

「も、勿論です、社長!」


 恰幅のよい男性──ガレウスさんは土下座をし、自分の息子であるレオンって奴にも土下座をさせていた。



 このままパーティに戻るのは嫌だったので帰ることに。

「いやぁ、咲良が狙われねぇようにしてたら碧が狙われるとは……ま、可愛いから仕方ないか」

「それより桐人兄さん」

「ええ、桐人」

「ん?」


 すっとぼけた声を出している桐人兄さんに私とレティシアさんは詰め寄る。


「何でレティシアさんには私の負担額が50億で」

「私には500億負担させたの⁈」

「「実際はどっち⁈」」

「……すみません、大赤字になるので500億にしました」

「何が⁈」

「お前らの戦艦作るのだけでも大赤字になるんだよ、俺の貯金の10分の1が吹っ飛ぶ! お前らから金を貰ってもな!」

「桐人兄さんどれだけ金持ちなの」

「モナル社経由で出した俺の特許の奴半分は俺に入ってきてるからな!」


 ちょっと思い出す500億で1000分の1。

 つまり50兆だしても大赤字。

 3000兆って言ってたのも実際は嘘ということ?

 ……実際の値段幾らなんだろう、怖くて聞けない。


「実際の値段はいくらなんです」

「言わねぇ、取りあえずモナル社も会社が傾くレベル」

「そ、そんなに……⁈」


 レティシアさんも驚いている。

 私も驚きを隠せない。


「と、言う訳で、俺が金もらってるけど慈善事業に近いって思ってくれよな!」

「「……」」


 桐人兄さんの言葉に私もレティシアさんも渋い顔をして見合わせるしかなかった。





 ちなみに、ガレウス専務は、レオン(馬鹿息子)を矯正することで何とか首が一枚繋がったらしい。

 どうやら、ギチギチに校則がキツい男子高の寮生学校にぶち込んで外部からの接触を断つことで矯正しようという目論みらしい。

 馬鹿息子は既に女性がいない環境に音を上げているそうだがしったこっちゃない。



 私は怖かったので、二日間ほどいつも以上にノウェムさんへ抱きついて眠った。

 ……それだけは少しだけ役得だったけれど、あとは良くない!





碧の誘拐未遂と、XXX未遂。起きました。

碧は自分が可愛くないと思ってますが、周囲からみれば十分かわいいし、人によっては上物の綺麗めな顔でもあります。

ただ、比較対象が可愛すぎる(碧目線)美奈と美人過ぎる(碧&他人目線)のレティシアが対象なので卑屈になりがちでその上での事件だったから怖かったでしょう。

未遂だからと言っても怖かったのが最後で伝わると思います。

これが後々悪い方に影響しなければいいのですが……


ここまで読んでくださりありがとうございます。

誤字脱字報告等ありがとうございます。

次回も読んでくださるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
未遂でおわってよかったわ〜…。周りの顔面偏差値が高いばかりに、碧ちゃん自信無くしてしまってるんですね…。碧ちゃん十分可愛いから自信持ってといいたいけれど、いくら言っても碧ちゃんの自己肯定感が低いと言葉…
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