76.愚痴とドゥオの欠点~パラシートゥス迎撃戦~
ネブラが宇宙規模の戦争を起こそうとしているのを分かっているのに、自分たちはいつも通りのことしかできないことを悲観的になる碧。
そんな中ロゼッタから連絡が来て、なんとか憂鬱を誤魔化す為にドゥオに対する愚痴を言う──
私は自分のペンダントに触る。
母からの形見のペンダント。
あの日のメッセージが焼き付いている。
ネブラは宇宙規模の戦争を起こそうとしている。
その事実を知ってしまったのに、私達にできるのはいつも通り仕事をすることだけだった。
だって、私は規模の大きな仕事をやってきてはいるが、会社の規模はまだまだ小さいのだから。
憂鬱でため息がこぼれる。
そうこうしていると、通信機が鳴る。
「はい、こちらパトリ社」
『碧さん、ロゼッタです……? どうかしましたか?』
「い、いいえ! 何も……いや、ドゥオが馬鹿やり過ぎて頭痛くなってて……」
何とか嘘を──いや、嘘ではないな。
ある意味事実で誤魔化す。
『それは本当に申し訳ないです』
「いや、本当ですよ、もう! この間なんかノウェムさんのこと襲おうとしましたらしいですからね!」
『レティシア様にご報告は⁈』
あ、ロゼッタさんもノウェムさんのこと心配してくれる、嬉しいな。
「パトリ社で出すドゥオの給料を反省するまで0でという許可を頂きました」
『……パトリ社から出してる派遣費も削りましょうかね、レティシア様と相談して』
「え、そんなことしても大丈夫ですか?」
逆恨みされないかなぁ、と不安になる。
『ドゥオは元々反社会系組織に潜り込んで潰すという役割があったので、護衛以外のその他の任務は潜入捜査以外ポンコツなんですよ』
「ワーオ」
なんかとんでもない事聞いちゃったぞ。
『一応、更生プログラムも受けさせたそうなんですが、それでも名残が残っていて……』
「はぁ……」
道理で、メンテナンスがポンコツな訳だよ、技量が上がらない訳だよ。
だが、許さん。
ノウェムさんを襲ったことは事実なのだから。
「それで何かお仕事ですか?」
『あ、はい! 木星付近でパラシートゥスの群体が集まっていると、至急集まってほしいと』
「了解です!」
私は通話を切り、緊急通信のマイクをオンにする。
「木星付近にパラシートゥスの群体が集まっているとのこと! 戦闘員は急ぎ戦艦ポラリスに搭乗せよ!」
私はそう言ってからパワードスーツを装着する。
自室の外ではパワードスーツ装着済みのノウェムさんがいた。
急いで戦艦に乗り込むと、ウヌスさんたちとクラレンスたちが既に乗っていた。
「あれ、皆乗り込むの今日早いね?」
「丁度グラウンドでメンテナンス後の動きを確認していたからな」
「んーじゃあ、今日はウヌスさんと私とノウェムさんで何とかするから、皆は戦艦を動かすのに集中してね」
メンテナンス直後に不具合が出たら困る。
だから今回は後方支援に回ってもらうことにした。
「え⁈ 何で⁈」
メフィストが抗議の声を上げる。
「仕方ねーだろ、ドゥオの奴もしわしわになりながらメンテナンスに参加したんだ、不具合でてもおかしくねぇ」
「そうですね、では私共は戦艦で援護にまわりますので、お嬢様、ノウェムさん、ウヌスさん、どうかお嬢様をよろしくおねがいします」
「分かっている」
「勿論だ」
相変わらず過保護なのにふて腐れる。
「もうちょっと信頼してもいいじゃん」
「お嬢様が無茶しないようにですよ、ノウェムさん。くれぐれもお嬢様に無理はさせないように」
「分かっている」
そうだよね、私とノウェムさんの戦闘機は二人乗り、私のサポートが重要になる。
「取りあえず急ぎ現場に向かいましょー!」
「「「「了解!」」」」
「了解した」
「了解」
戦艦を上昇させ、ワープ可能区域でワープを開始させた。
光に包まれたその先では──
「やだ! お家帰る!」
今までに無い位のパラシートゥスの群体に、私は半べそになり即効で帰るを選択に入れた。
「だが、これをこなせば借金返済に一歩近づくぞ」
「かなりの艦隊がそろっていますね、抜けるのは至難の業かと」
「うー! もー! やってやるー! お金少なかったら文句言ってやる──‼」
やけくそになって減圧室に向かい、無重力に体を慣らしてからそのまま向かう。
戦闘機に乗り込み、出撃する。
「大型個体30体に、中型個体40体に、小型個体は多すぎて計測できないってどんだけよ‼」
『まずは、小型個体を少しでも減らすのが先決だな、その次に中型個体、高速個体はバリアで自滅して貰おう』
「みんな一気に自滅する方法ないかなぁ」
『新型のミサイルがある、半径100キロのパラシートゥスを一気に消滅できる、が値段が高いぞ、一発4億だ』
「4億……」
私は遠い目をした。
だが、なりふり構っていられない。
この状況では。
「ウヌスさん、ノウェムさん別方向に一発ずつ撃って!」
『『了解』』
ミサイルらしき物体が二つ飛んで行く。
パラシートゥスが密集する場所で花火の様に綺麗な光を放ちながらパラシートゥスの群体を一瞬で消滅させた。
「す、凄い……」
『主砲の準備が整ったようだ、一旦この場を離脱するぞ』
「うん!」
『了解』
一旦全戦闘機はその場所から離れた。
次の瞬間、各戦艦の主砲が残っている小型のパラシートゥスや中型のパラシートゥス、大型のパラシートゥスへ命中する。
『残存大型パラシートゥス5体、中型1体、小型は2000か、まぁ減った方だな』
「減ってるけど減ってないー!」
小型2000ってどんだけですか!
「やだー! お家帰る!」
『碧、もう一踏ん張りだ』
「う゛ー」
ノウェムさんに宥められ、私はしょぼんとしながら、サポートに回る。
「右方向から20体接近中‼」
『了解!』
ミサイルが放たれ、小型のパラシートゥスが接近したがミサイルによって消滅させられる。
「毎度毎度思うけど、コレを手伝わない地球政府最悪すぎる──‼」
『同感だ、まぁ地球政府もパラシートゥスの研究やってるらしいのが前回の情報で分かったとレティシアが桐人から聞いたと言っていた』
「は?」
マジふざけんなよ。
人類を守る立場の人たちが、どうして人類を危険にさらす研究なんてするの。
他の国だけじゃなく、アンタラもやるのか⁈
それでどうもならなくなったら助けてってモナル社に泣きつくんでしょう?
もう未来は見えてるんだよ!
『碧、サポートに集中してくれ』
「ご、ごめん、上から5体接近中、距離は10キロ先」
『了解!』
そんなドンパチを繰り広げていると、またウヌスさんから通信が入った。
『二回目の主砲発射準備が整ったそうだ、離脱するぞ』
「分かった!」
『了解』
二度目の離脱後、各戦艦の主砲が残存勢力を一掃する。
『パラシートゥス反応消滅、完全撃破だ』
「やった──⁈ ……疲れたよぉ」
『二時間もぶっ続けでパラシートゥス迎撃のサポートもすれば疲れるだろう』
「……お家帰る──」
疲れて半べそになって言う。
『分かった、帰ろう』
『そうだな』
戦艦に帰還し、加圧室で体を鳴らしてから皆がいる操舵室へ。
「疲れたよ~~」
「もうやりたくありません……」
みんなグロッキーモードになっていた。
「大丈夫皆、何か不具合とか無かった⁈」
「不具合はねぇが、非常に疲れた。それだけだ」
「疲れた……? 皆急いで帰って宗一お爺ちゃんにメンテナンスして貰って!」
首を傾げるみんなだが、レイジングだけは何か察したらしい。
「分かった、さっさと戻るぞ」
「じゃあ、ワープ開始」
そう言ってワープして帰還した。
帰還して皆をメンテナンス室に行くように言って私たちも付いて行く。
「おお、どうした。碧? 何か不具合でも?」
「お爺ちゃん、もう一回全員を見てくれる? 特に疲労感知回路を」
「……分かった」
宗一お爺ちゃんは丁寧にメンテナンスを開始した。
そして──
「ドゥオ──お前さん、疲労感知回路の感度を倍にしよったな⁈」
「え、倍? どういうこと?」
ドゥオはさっぱり分かっていない様子。
「正常値は1、なのに今は5になっとる! 疲労感知回路は、どの程度動けば人間も同じ疲労を感じるかの値で、5が人間と同じ値じゃ! ロボットの場合は1にせんとエネルギー効率も悪くなるんじゃよ! お前、教材で散々教えたじゃろうが!」
宗一お爺ちゃん大激怒。
まぁ、それも仕方ないか、今回は何とか帰れたが、下手したら皆疲れて動けなくなって戦艦で援護射撃もできなくなっていた可能性が高いからだ。
主砲だって撃てなかった可能性もある。
戦艦ポラリスは最新型だから、補助機能も満載だったから二時間保てた。
だがそれ以上は?
人間の集中力なんて、長くは続かない。
私は必死になって二時間、休憩も挟めずに持たせた。
でも、皆は?
そう考えたら怖くなった。
「ドゥオ、お前さんはまた初歩からやり直しじゃ! 少しできると思って任せるとやらかすのが今回よーく分かった!」
「ちょっと待ってくれよぉ、俺給料当分無しって言われてる身なんだぜ⁈」
「そんなん知るか! お前さんの自業自得じゃろうが!」
半泣きになりながらドゥオは宗一お爺ちゃんに引きずって行かれた。
お勉強部屋もとい、道具と教材で体で覚えるまで練習させる部屋に。
「宗一お爺ちゃん、年なんだから無理しないでほしいのに」
「そこは私から宗一氏に言おう」
ウヌスさんが申し出てくれた。
「お願いね、第三者の言葉の方が聞いてくれることがあるから」
「ああ」
ウヌスさんは派遣社員だから、聞いてくれるだろう。
「私ではダメなのか?」
ノウェムさんが頼られなくて不満げに言う。
「だって、ノウェムさんはもうウチの家族でしょ!」
ノウェムさんは目を丸くしてきょとんとしてから、嬉しそうに微笑んだ。
「そうか、そうだったか」
「さて、金額が入金されるの待とうか。多分明日以降だし」
「そうだな」
そういう会話をして、その夜は二人で風呂に入り、疲れ切った体のまま眠りについた──
前回では盛大にやらかしたドゥオですが、今回も盛大にやらかしてくれました。
ロゼッタも矯正プログラムを使ったがどうにもならなかったと愚痴るレベル。
いつかドゥオが汚名返上できる日はくるのか……?
まぁ、それはそれとしてノウェムはもう碧たちにとっては家族同然だというノウェムにとって嬉しい言葉がありましたね。
ナンバーズやレティシアたちとは違う繋がり、これがノウェムが欲しかったものなのかも知れません。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字報告等ありがとうございます。
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